ペーターの去った後、しばし静まり返る室内

確かな才能の片鱗を見せたペーター
ベン.データは、ペーターを退室させた事に納得が出来ない



「先生…これで良かったのでしょうか……」




椅子に深く腰を落とし、一息つく…訳は無く、テーブルの隅に鼻を押し付けているP

本当に、なんなのだろう…このおじさんは…いや、この天才は…
何で鼻をテーブルに押し付けてるんだろ…





『んーーーーー!?』

「うお!ビックリした!」

『うわ、うわー、ごめん、ごめんごめん…ペーター君はねぇ…うん。アレで良いんだ…』

「至っている、とか、プレゼントとか…訳が分かりません…」

『うわぁ〜…ごめん、ごめんごめん…まぁ、その話はその内…少し先の未来で分かるよぉ…しかし、今はそうじゃないよねぇ?我々の話をしないとねぇ?ダメだよぉ』

「申し訳ありません。そうですね、我々の研究…なぜ僕が呼ばれたのか…は、まぁ、僕の共感覚であろう事は分かります。しかし、先生の目的、その研究…」

『うん、うんうん、うん、話を始めようねぇ…』

「よろしくお願いします」

『ベン君は「アカシックレコード」は知ってるぅ?』

「はい。まぁ、有名な話ですし…神智学に置けるアーカーシャの…」

『んーーーーーーーー!!!!?』

「うお!ビックリした!」



















ベン君

はい

あのさぁ、この業界何年やってんの?

業界?

この世界がもしも誰かによって書かれている物語だとしたら、君が「アカシックレコード」知ってたら、ワタシのアカシックレコード説明パート飛ぶでしょ?そしたら、読者がアカシックレコード分からないでしょ?
ここ、結構大事なパートだから頼むよ

……大変申し訳ありませんでした

んじゃ、さっきの所から始めるからねぇ




















『ベン君は「アカシックレコード」は知ってるぅ?』

「アカシックレコード?まぁ、話に聞いた事くらい…ならば…」





「アカシックレコード」

この世界の全ての事象、現象、存在する全ての生命の生と死、過去未来森羅万象が記録されているとされる存在

名も無き人間たった一人の人生。それ所か、スズメ1匹亀1匹、ミジンコ1匹までに至る「この宇宙全て」に存在する全ての全てが記録されているとされる存在

もちろん、科学的には相手にすらされないオカルトの世界で語られる異物

それが「アカシックレコード」







「その…アカシックレコードが…我々の研究?」

『考え方が…似ているんだよねぇ…』

「考え方?………」

『神々の、海は六つ目、人は四つ目…は知ってるぅ?』

「星を眺める民の伝承。先生の功績により、よもや知らない学者は存在しませんよ」

『神々の、海は六つ目、人は四つ目…コレは伝承の最初の一文で、この後、かなり長い話が続くんだ』

「ああ…星を眺める民を研究している方の論文で、少し読んだ事はありますね…えーーー…風に学び海は知る…とか、なんかそんな感じの話」

『うわぁ〜、凄い。良く勉強してるね…そもそもね、ワタシが遺伝子工学を学んだのも民俗学を学んだのも始まりはそこだったんだよぉ…』








神々の
海は六つ目
人は四つ目

風は遺し
海は知る

神の民は海を渡り
知の世界を感じるばかり

空知る民は海を超え
足元に広がる空へ船を出す

上は四つ目
下は五つ目
神は六つ目









「学び、では無く、遺し、でしたか…興味深い伝承ですね…しかし、まぁ…全く意味は分かりませんが…この伝承が、先生の研究…と言うか、我々がこれから立ち向かう研究に関係している、と」

『んーーーーー!?伝承はまだまだ長いよぉ、最初の辺りをまとめるとこんな感じなだけだよぉ。でもその通り。伝承は「神の民の言葉」として、星を眺める民の最も大切な教えとして受け継がれているんだよねぇ…』












Pの脳内に、綺麗な夕焼けの輝く美しい海辺が思い出される
かつて、あまりにも卓越した頭脳により、一般社会との交流が難しくなってしまった少年がいた
その少年の才能にいち早く目を付けたPは、少年の家庭教師となる
その少年の「海は入れ物なんだよ!」という言葉…
あの少年は…なぜ「分かった」のだろうか…
そしてなぜ…彼に…「力」が渡ったのだろうか…















「…先生?」

『んーー!?うわっ、ごめんごめん…』

「取りあえず、部屋の隅から戻って来て下さい…」




『ベン君…君は海の声を聞いた事があるかなぁ?』

「海の声?」





海は、この世界の全てを記録する媒体なんだよぉ…




「世界の…全て…」




風は遺し
海は知る

神の民は海を渡り
知の世界を感じるばかり



ワタシの民俗に伝わる伝承






海に生きる哺乳類の一部は、海中ではほとんど目が見えないんだよぉ
しかし彼等は、逃げまどう魚を見事に追って狩りを成功させる
なぜ、目も見えないのに獲物を追えるのかなぁ?
とても不思議だ

魚類の泳方は、哺乳類では到底辿り着けない世界
しかしそれでも、彼等哺乳類は魚を誠上手く捉える

何故にそんな神業が成功するか?
それはね、彼等は魚類の泳いだ「海に遺る波」を感じる事で、魚類の逃げ先を計算出来るから、なんだよぉ

海にはねぇ「遺る」んだ
「波」の記憶が「遺る」







風は遺し
海は知る







地球には、常に流れ続ける存在が3つ在る

時間

海流

時は常に流れ続る
偏西風と貿易風は常に与え続ける
海流は世界を周る

海の

時は記憶
風は情報
海流は拡散


風は世界中に行き渡り、通った世界でその姿を数多に変える
あらゆる姿に変わった風達は、海に沢山の自分のカタチの「波」を起こす

「波」はやがて海流となり、地球上の海全てに伝わって行く

そして海は、この世界の全てを記録する


大陸変動、気象、災害、生命の誕生…


五つ目の海の記憶までも…






「?五つ目の海…」






ベン君「光」とは、とにかくオカシな存在だよねぇ…

「粒子」でありながら質量を持たない。そして、粒子でありながら「波」の性質を持ち合わせる…そんなの、おかしいよねぇ?

だから、気付いた…「光」は、神が「地球というアカシックレコード」に「宇宙の情報」を記録する為に造った存在なんだと、ねぇ…

地球上の情報を記録するだけなら、光は必要の無い存在なんだよぉ。風が在れば、風によって「波」が発生するからねぇ
しかしそれだけでは、宇宙の情報を記録出来ない
その為に、神は「光に波を与えた」んだねぇ

ワタシが、星を眺める民だったから、気付いた…気付けた








空知る民は海を超え
足元に広がる空へ船を出す

上は四つ目
下は五つ目
神は六つ目







ずーーーっと、おかしいよねぇ?と思ってたんだ
上は四つ目…下は五つ目…


何で、人は四つ目、神は六つ目なのに、上が四つ目で下が五つ目なのかなぁ?ってねぇ…










「はい……………………」

よもや、ベン.データは全く理解出来ない状態

神が光に波を与えた?
ただのオカルト話か?
っつーーーか「伝承」なんて今聞いたばかりだし、全く意味が分からない…






『んーーーーー!?何言ってるんだ?って顔だねぇ(笑』

「ああ、いや…初めて聞く話ばかりで…すみません…」

『もう日も暮れて真っ暗だ…ちょっと海の夜風にでもあたりに行こうか…』

「?…はい…」

『この研究所はすぐそこが海だからね、気分転換にも研究にも素晴らしい立地だよねぇ(^^』













良く晴れた、素晴らしい星空の夜


さざ波すら立たない凪の海に


素晴らしい星空が輝く















凪の


海に


輝く星空











上は四つ目
下は五つ目











「ああ…ああ…………なるほど…」


『やはり君は…素晴らしい…』










































































Pの脳内に、綺麗な夕焼けの輝く美しい海辺が思い出される
かつて、あまりにも卓越した頭脳により、一般社会との交流が難しくなってしまった少年がいた
その少年の才能にいち早く目を付けたPは、少年の家庭教師となる


「波の運動法則」の授業を海岸の砂浜でした後の事
少年は輝く海を眺めながら、Pですら意味の分からない数式を砂浜に書き始める
少し考えた後、少年は言う


「そうだ!分かったぞ!凄い!円運動には摩擦が大敵だから永続出来ないけど、地球上なら海の波が最も効率的な円運動を継続出来る条件になるんだ!まるで、神様が海を眺めてるみたいだ!」


『んーーーーー!?なにぃ?神様ぁ?』



「そうだよ!神様だよ!絶対!だって海って、オジーと同じ色だもん!」



『………うわぁ〜〜〜………君は……どこまで「視えて」いるのぉ?』



「?…良く分からないけど…海は入れ物なんだよ!」




『君は…「特別な子」だねぇ………ウチヒサ』