ラット40匹の選別

誰も理解の出来ない事象、神業

それでも「それ」は「証明」された

まさに「神の証明」

それからしばらく、彼は世界の常識の根底を覆す様な様々な研究結果を発表し、その後突如として表舞台から姿を消す

世界中の研究機関やマスコミが、こぞって彼の失踪の理由や現在どこで何をしているのかを調べていたが、真相は解明されないまま現在に至る








〜ここからは#9の続きが始まります〜








「ベン君。分かる、分かるよぉ〜。ワタシには「何が視えているのか?」気になるよねぇ〜?でも、ごめん、ごめんごめん、ごめん…ペーター君、君の「仮説」を聞いた後の方が「ワタシの世界」を理解しやすいと思うんだよねぇ」

『!?わ、私の仮説ですか!?』

「そーだよぉ〜〜」





またもやこのおじさんは、いつの間にか部屋の隅っこから話している…いったい、いつ隅っこに移動したのだ?
真剣に「P」の話に耳を傾けていたのに、全く分からなかった…
あ、いや、そーじゃないや、そーじゃない


ベン.データの鋭い視線


『う、あ、いや、あの、私の仮説を聞いて頂けるのは大変有難いのですが、やはり私も、先生の「世界」が気になりますよ!』

「んーーーーーーっ!?うわぁ〜…そっか、そっかそっか…うーん…でもなぁ…ワタシの世界を知った後、君の仮説が変わってしまったら…うーん…」

『いえ、それはないと思います。私の仮説は恐らく、より強固なモノとなります』



ペーターのその言葉を聞くと、Pは何か大切な物でも撫で回すかの様に手を動かしながら、ブリキ人形の如くちょこまかと動き回る



「うわーーーーー…まいった…まいったまいった…到達している…うわぁーーーーー…」



放っておくといつまででもブリキ人形のままで、二度と人間に戻らないのではないか?というくらい、ちょこまかと動き回る



『せ、先生?』

「うわっ!ごめん、ごめんごめん……そうだねぇ…話そうか…ワタシの世界を…」











ついに!伝説の民族の世界が!?
眼の色を変えるデータ、ペーター











「うーーーーーん…実はね…大したモノは視えていないんだよぉ…」


大したモノは……って………………










瞬間












二人を襲う、脳が揺さぶられる感覚
これまでに感じた事のない、強い「カジュアルな匂い」












そして目の前が真っ暗に…どころではない現象

目の前にいるPの姿が金色に輝いている















な、な、な、な、なんだコレは!?


「それが、ワタシの世界だよぉ…」










せ、せせ、先生!?その金色は先生なのですか!?なんだコレは!?なに!?意味が分かりません!うひゃーーー!!!!

慌てふためく二人

しかし数秒で輝きは消え去り、目の前に広がるのは先程と変わらぬ世界と、またもやいつの間にか隅っこに小さく丸まるP




『せ、先生!?何ですか今のは!?』

「うわっ、ごめん、ごめんごめん、また隅っこに行っちゃった…もうコレ病気だなぁ…」

『いや、そこどーーでも良いから!あ、すみません、どうでも良いですから!何ですか今の!』

「今のが、ワタシの「世界」だよぉ…」





会話形式ではどれだけ長くなるのか想像も出来ない為、キャラ説明みたいにしてまとめてしまおう

「星を眺める民」は個々の能力の違いは在れど、基本的な能力として、遺伝子の優劣を「色覚」で認識出来る
遺伝子の色は決まっており、その色の数は4色。コレを星を眺める民は「遺伝子の4原色」と呼び、その色は「赤、青、緑、黄」の4色
それぞれの色の濃さで、繁殖力の強弱、免疫力の強弱、先天的疾患の有無、母体の遺伝子を次世代に引き継ぐ力の強さが判別出来る
しかしながら、遺伝子は当然混ざり合う為、4色もまた混ざり合い、非常に複雑な色彩を放つ
その色の濃淡や有無を見極める事に長けた者が後継者を選び、見極める事で、永き民族の歴史が在りながら、少数民族間での近親相姦でも遺伝子のエラーを発現させる事なく、遺伝子をつむぎ、伝え、研鑽し続け、ついに

「成功」

した









その「成功」こそ


「金色」に輝く赤ん坊の誕生














それまでの星を眺める民の歴史上初めての「色」を持って産まれた「5色目」の人間

「黄金の遺伝子」

その赤ん坊こそが「P」

そして彼は特別な能力を持っていた

人間に元来備わる「五感」

その五感の遥か先の能力「共感覚」

そして、さらにその先。人間の能力を超えた力

「与覚」

自己の特別な能力を、他人にも知覚させる能力
能力を与える能力「与覚」


Pの能力の全てを完全に他人にも与える事など当然不可能であるが、自分の視えている世界を、ほんの少しだけ「知覚」させる事の出来る力




















「だから、今二人が視た世界が、ワタシの世界だよぉ」


データとペーターの受けた衝撃、それは、人知を超えた世界の存在を認めざるを得ない衝撃


コレ…は…

理解…出来ない…信じる事を脳が拒否する

しかし

『「現実に今、視えてしまった」』






愕然とする二人へ、にこやかに笑いながらP






「ペーター君。君は化け物だよぉ〜。だってワタシのこの「与覚」を全く知らなかったのに、既に理論的には解釈している」

『Σ( ̄□ ̄;)わ、私が!?私の何がですか!?』

「んーーー?何がって…ああ、そうかそうか、そうか、ごめんごめん、ごめん…」






ペーターは、これより続くPの発言により「自己の思考の限界」という「己が勝手に決めてしまう壁」にブチ当たり、長くその壁に苦しめられる事になる…
天才であるが故に
そして、自分よりも遥か高みに在る天才…そのように、己が勝手に決め付けてしまったベン.データが、隣に居たが故に








「ごめんごめん、ごめん…本当に素晴らしい。ペーター君。君は既に「至っている」よぉ…「ワタシの未来」に…うん、うんうん…凄い、凄い凄い…「知覚出来ない個体も存在するカジュアルな匂い」「不知覚個体のベン.データは共感覚を持つ」「知覚個体である自分は共感覚を持たない」たったコレだけの情報から、ワタシでもその存在に気付くまでにかなりの時間を要した………「波」の概念に……素晴らしい」





『波』





ペーターは、まだ話てもいない自分の「仮説」の「根本」を見事言い当てられてしまう
その「根本」が、いったいこの先どれ程大きな意味を持つのかはまだ分からないが、ただのダベりの中で見極められてしまった
このおじさんは、きっと、遺伝子とかそーゆー事ではなくて…未来とか、人の心とか…思考とか…

ダメだ。私とは、住む世界が違う…






ベン.データもまた同じく「仮説」を上げるのであれば「波」の概念を共感覚に取り入れる事が不可欠だと考えていた。それがデータの、ある種の「仮説」







二人の天才の思考はPによって一瞬で見抜かれた
しかしこの場合、Pですらかなりの時間をかけて辿り着いた概念に既に追い付いたのだから、やはり二人は間違い無く天才の中の天才










しかし、同じ天才同士でも、運命は二人を別つ










「ペーター君。うん。ありがとう、ありがとうありがとう…うわぁ〜…うん。ありがとうありがとう…今日はもう、ここまでで良いよぉ」

『?はい?』

「ここからは、ワタシの未来…いや、その未来の為の研究の話になっちゃうんだ…ごめんねぇ…うわぁ…ごめんごめん…ごめん」






表向きはただの国立研究機関である「ライオン」
所属する研究者達にはそれなりの年収と社会的地位が確立されており、その様な立場に置かれると人間は、満足してしまい、探究心を失う…

そんな世界の中で

周りの全てがおかしいと感じながら、それでも「ライオン」で努力と研鑽を重ね、やっと賢者の迷宮に認められたばかりの研究者ペーター

「無双の証明」によってアルファベットを解散させた「P」と「ベン.データ」との邂逅

それが「ペーター」の、賢者の迷宮で任された初めての任務





ここまで、ここまで来て…「波」の概念まで辿り着いて…
しかし確かに、自分に与えられた役割は「Pとベン.データの邂逅」だけ






各研究室間の移動すら厳しく制限される賢者の迷宮に置いて、研究内容は最重要機密


「ペーター君。分かるよぉ…「探究心」は我々の命そのモノ。そして君は「至った人間」だ。だから約束しよう。ワタシとベン君の研究は必ず成功する。そしてその暁には、ワタシから君に特別なプレゼントを預けるからねぇ…」


『プレゼント…?』


「それを理解する時、君の仮説は、とても重要な鍵になる…うわぁ〜…うん、うんうん、よし!よしよし!頑張っちゃうぞ!うわぁーーーーーーー!!!」



大きな鳴き声と共に、強いカジュアルな匂いが研究室に充満する



『有難きお言葉の数々、喜びの限りでございます!それでは、失礼させて頂きます』

「んーーーーーーー!君の将来を待っているからねぇーー!うわぁーーー!!!」







































Pの研究室を出た後、ペーターは服の匂いを嗅いでみたが、あれ程充満していた強いカジュアルな匂いは全くしなかった




「波」か…