「星を眺める民」の能力を「証明」する上で、民俗学者痛恨のミス

モブが民俗学者の想定以上の能力を有していた

「星を眺める民」の能力平均値以上の世界が視えてしまっていた




己が民族の能力を「証明」しようとするならば、石橋を叩くべきであったのだ

学会に要求した実験用計40匹のラットの条件「通常遺伝子を持つラット20匹」と「先天的遺伝子異常を持つラット20匹」
その条件に「同じ遺伝子を持つクローンラットに限る」という条件を加えておけば、こんな事態には決してならなかったであろう

ただただ「通常遺伝子」を持つラットと「遺伝子異常」を持つラットを用意しろ、と言われれば、そりゃ「クローンを用意する」なんて考えが浮かぶ訳もない。学会側は研究室で飼育されているラットからランダムに選ぶのが普通

そもそも「優れた遺伝子を認識する事が出来る」なんて事自体、夢の様な話に過ぎないのだから





モブは「認識」を超え「視えて」しまっていた…

想定以上の能力者だったとは…





窮地に立たされる民族学者








「星を眺める民」の「最高傑作」

彼は抽象的ではあるが、生物の「遺伝子を視認、区別する」事が出来る

そして、それがどれ程の危険性を秘めている能力であるかを良く理解していた
だからこそ実験をモブに依頼したのだが…モブによる実験は失敗…このままでは自分達の民族が有する能力を、科学に応用出来なくなってしまう…いや、科学に「否定」されてしまうだろう

民族学者の夢「人類の始祖」の発見
それは、己が民族の歯車と、科学という歯車が噛み合わなければ、決して叶う事はない






「最高傑作」である自分ならば、実に簡単な「証明」

しかしそれは、とても難しい

自分の強すぎる能力、その危険性を考えると、躊躇せざるを得ない

しかし…






会場に大きく響くブーイング


『この嘘つきが!』
『時間の無駄だったな!』
『やはり不可能だったか!』


一旦引いてしまえば、恐らくはもう二度と、自分に「証明」のチャンスは与えられない…チャンス所か、オカルト扱いされてしまうだろう…

やるしかない、やるしかないのだ…







彼は一つ

大きく

鳴く





「うわぁーーーーーーー!!!」







その「鳴き」に、静まり返る場内








行くしかない!やるしかない!

「よし!よしよしっ!よしっ!お母さん探しをしてやろう!」

『お、お母さん…?』







己が「民族」の能力を「証明」しようとするならば、石橋を叩くべきであったのだ

「星を眺める民」その「民族」が持つ能力の「証明」だけ、ならば

しかし、その民族の「最高傑作」である自身の能力を「証明」するのであれば

学会に要求した実験用計40匹のラットの条件「通常遺伝子を持つラット20匹」と「先天的遺伝子異常を持つラット20匹」
その条件に「同じ遺伝子を持つクローンラットに限る」という条件を加えておかなかった事は、これ幸いと言う他には無い






「証明」の内容は難解で在れば在るほど、その信用性を増す
考えてもみれば、モブが「通常遺伝子を持つラット20匹」と「先天的遺伝子異常を持つラット20匹」を見事に分けて見せた所で、どーせ凡人はすぐに納得理解せず、我々の能力を「反証」出来る研究をすぐさま始め、否定に躍起する事であったろう

とある数学者が、とある予想問題を「証明」した時、誰もがその「証明」を「理解出来なかった」
しかし「証明」には間違いが存在せず、誰も、どの研究集団も「反証」出来なかった為に「誰も理解出来ない証明」が「証明」として認められた事例が在る…








壇上の隅っこに、ハムスターの様に小さく丸まる民族学者を見て、ざわめき出す会場


慌てるモブ


『だ、大丈夫ですか!?』

「んーーーっ?何ぃ?………うわっ!うわぁ〜、やっちゃったやっちゃった…ごめん、ごめんごめん」







「科学」に置いて、最も重要な事は「証明」に対する「反証」であると言っても過言ではない
「証明」された事実に対して「反証」を示す事でしか、間違いを指摘する事が出来ないからだ







しかし「遠い世界」から「この世界」を視て居る存在にとって「それ」は滑稽な行いに過ぎない








民族学者は、自分の詰めの甘さを反省すると共に、自分の能力を「暴力的証明」によって世界に認めさせてやる事を決意



滑稽滑稽、誠、滑稽




「誰も理解出来ない」してくれなくて結構

「天衣無縫の証明」で在れば、全ては「認めざるを得ない」


それが「証明」だ


反証も反論もさせやしない。出来ない。そこまで突き詰めてやる

















私の能力で、全世界を


潰してやる














それでも地球は回っている















「うわぁーーーーーーー!!!」


















民族学者再びの「鳴き」に、再度静まり返る会場




「よし、よしよしっ、よしっ!やるぞ!よしよしっ!」

静かな会場中に響く民族学者の声





民族学者の前には、モブによって分けられたラットを再び混ぜ入れた箱が一つ


会場全体に、一瞬「カジュアルな匂い」が強く行き渡る







民族学者は40匹のラットの背中に次々と油性ペンでマークを付けていく

「丸」ラット10匹
「三角」8匹
「四角」4、「十」6「#」10「星」2

時間にして10分程
ちょこまか動くラットの背中にマークを書くのは意外と難しい

「うわっ、イテテ」

指を噛まれるのは日常。そんな時は、ラットの鼻を指でツン!としてやるのだ







40匹のラット全てにマークを書き終えた民族学者








静まり返り続けている会場

(・Д・)?
(^^?
(´・ω・)?









「よしっ、よしよしっ!母親が同じラットをマーク分けしたよ〜」









静まり返る会場


「この40匹のラットは、5匹の異なる母親から産まれてるねぇ…それぞれの母ラットごとに、丸、三角、四角、十、#のマークだよぉ。星マークの母ラットは丸ラットと同じだけど、双子ちゃんだねぇ…うわぁ〜珍しい珍しい、珍しい」


静まり返る会場











何を…言っているのだ?














しばしの静寂の後、ざわめき始める会場


『どーゆー事だ?』
『奴が何を言ったか…ジョークか?』
『ジョーク?冗談じゃない。侮辱だ!我々は暇だから来ている訳ではない!』


ざわめき出した会場に向けて、再び大きく響く鳴き声


「んーーーーーーっ!!!?」
















鳴き声が響くと、やはり会場は静まり返る

民族学者の行った「ラットを分ける」という不可解な行動もさる事ながら、この「鳴き声」の「何か」が全ての人間の「何か」に影響を与える事を、会場にいる者は体感
そして強い「鳴き声」を聞いたその瞬間、広い会場中に「カジュアルな匂い」が充満し、すぐさま消える









この民族学者…何者なのだ?











「キチンと調べもしてないのに、そんな言い方おかしいよねぇ?ダメだよぉ」
















まさか、まさか…「ラットの選別」は…民族学者の話は…事実なのか?






















検証の結果は書くまでもない
























名も無き民族学者

誰にも知られる事のなかった少数民族




彼等はこうして、誰もが知る存在となった