文字を見た時、その文字に色を感じたり、特定の形に匂いを感じたり、ドレミファソラシドの音階に味を感じたり…様々な例がある知覚現象「共感覚」







ベン.データの持つ特殊な能力「全ての「運動する物体」に存在する「運動方程式」が可視化する」という能力

彼の天才的な頭脳によって昇華され過ぎた為に異様な表現となっているが、その能力は「シナスタジア」つまり「共感覚」である








「ワタシの…カジュアルな匂い…それはね…ワタシは全く分からないの…うわっ、言っちゃった…言っちゃった言っちゃった…うわーー!!!」



『「Σ( ̄□ ̄;)」』



驚愕するデータ、ペーター

しかしながら、自身が発する匂いとは元来気付きにくいモノ
例えば口臭や髪の臭い、足の臭いや汗臭さ、病に分類されるレベルになると魚臭症という遺伝病がある
強い嫌悪臭を発するが、本人は全く気付けない
その事から考えれば「カジュアルな匂い」を発する本人が分からないと言うのは納得もできるモノ…




ブリキのオモチャの様な独特な動きをしながら、またもや部屋の隅っこに移動しながら話す「P」




「うわ〜、凄い、凄いな、ペーター君、御名答。凄い凄い」

『?私ですか?それは…つまり…』

「そう、そうそう、そうなんだよ、当たり当たり…うわ〜、凄い凄い、凄い」

『せ、先生の「匂い」は…えーーー…「匂い」では…無い…』




ペーターは自分で仮説を立てて置きながら、それでも内心「有り得ない」と考えていた
人間本来の匂い知覚システム以外で「鼻腔内の嗅上皮を経由せず」に「匂いを知覚させる」なんて、有り得ない
脳機能の異常によって幻臭を感じるのならばともかく、それ以外の「本来のアクセス方法以外」で「匂いを知覚させる」など…絶対に、無い…筈だが…




『それ…ガチですか?あ、すみません、本当ですか?』




ペーターの一瞬の考察の内に部屋の隅っこに丸まっていたPは「んーーーっ?」と隅っこから顔を出す
その様相は、まるで巣穴から顔を出すミーヤキャットそのもの




「うわ〜…ペーター君、ダメだよー…仮説を立てたら、それは証明への道の始まりだよ。諦めちゃダメだよ」

『申し訳ありません。しかしながら、信じがたい…としか』

「うわっ。そうかそうか、ごめんごめん。その話をしてるんだもんね。ごめんごめん、ごめん」

『いえ!興味…と言うレベルではありません…この話は…とても信じられない…有り得ません…』





当然、ペーターと同じく、Pの話に驚愕しながら聞き入るデータ





「ワタシがワタシの匂いを「知覚出来ない」のは、だから当たり前なんだよ〜。「匂い」では無いんだから」

『匂いではない…では、世界中の人間が先生に感じる「カジュアルな匂い」とは…』

「ワタシ自信も、その「現象」の証明は未だ出来ないし、多分、これから先も、誰も「証明」は出来ないだろうねぇ〜…参ったねぇ…参った参った…もしかしたら…あの2人なら…」

『?』

「うわっ。ごめんごめん…」

『先生…今、ご自身の「カジュアルな匂い」を「現象」と言いましたよね!?』

「うわ〜、凄い、凄い凄い、凄い……そうなの、ワタシの「匂い」はねぇ…人間が「知覚」する「感覚」では無く「現象」と捉える事になるんだよぉ。ペーター君、君の仮説は実に素晴らしい」


『先生の「匂い」は…知覚ではなく「現象」…』

「そう。「現象」としか、今は呼べない」











「P」の発する「カジュアルな匂い」

それは「世界中のほぼ全ての人間が感じる匂い」

それは、とても珍しい…と言うよりも「P」にしか出来ない芸当



そもそも「知覚」は「現象」に含まれる
匂いを感じたり味を感じたり、音を聴いたり
人間の五感は全て「知覚」で有り、それはつまり「知覚現象」を脳が受け入れるから感じる「現象」そのモノ

では何故、Pは自身の「カジュアルな匂い」を「現象」としたのか



「知覚は、個々それぞれに感じ方が違う」からである



ある音楽を聴いた時、それを「心地よい」と感じるか「不快」と感じるかは、個々の感性や価値観、精神状態によって大きく異なる


「現象」は、その全てを含む大きな概念である為「P」にとっては使いやすい表現であった


なぜならば「どんな人間でも、Pからは、カジュアルな匂いを感じる」から


趣味嗜好、体調やテンション、さらには宗教の壁さえも超えて


「P」からは「カジュアルな匂い」を感じる


P自身も、それを「現象」としか表現出来ない


Pは部屋の隅っこに、これ以上小さくはなれないのではないか?と思われるレベルまで小さく丸まりながら、独り言なのか語りかけているのか分からない話を始めた









「ワタシ自信もベン君と出会い、そしてベン君の驚くべき能力を知ったからこそ、ようやく確信する事が出来た…そして、ペーター君の仮説は、ワタシがワタシのカジュアルな匂いを考察した時、正しく組み上げられるべき仮説そのモノであり、ワタシの思考にペーター君が至っていたが故に到達した仮説…本当に素晴らしい…うん、うんうん、やはり素晴らしい………………」



















しばしの沈黙


























長い






沈黙が



























長い…



































部屋の隅っこでハムスターの様に丸まっているP










『『?』』

目を見合わせるベン.データとペーター



こ、ここは…立場的に上の僕が…と、データ



『せ、先生?』







またもや部屋の隅っこからミーヤキャットの様に顔を出すP

「んーーーっ?」








そしてひと鳴き

「うわーーーーーーーっ!!!」

データ、ペーター『Σ( ̄□ ̄;)』

「うわ!うわうわ、うわぁ〜ごめんごめん、ごめん、ようやくこれで、ワタシの研究が進むと確信して安心しちゃった!ごめんごめん、ごめん、うわぁ〜」





本当に…なんなのだ、このおじさんは…いや、違う、この天才は、僕の視える世界をどこまで…いやいや、おそらく、さらに「その先の世界が視えている」






『先生は…いったい…』

「ごめん、ごめんごめん、ごめん、うわぁ〜…本当に、君と出会えて良かった…ベン君…ベン.データ……そして、ペーター君」

『?』

「うわぁ〜……申し訳ない、申し訳ない…話を戻そうねぇ…ワタシの「カジュアルな匂い」の話に…そしてコレは、この先のワタシの研究に繋がる話だよぉ…」

『その研究に関わる為に、僕は呼ばれたのです…P先生、あなたに』

「うわっ…(^^;」








「優れた共感覚」の持ち主であるベン.データは、Pの「カジュアルな匂い」が分からない

「共感覚」を持たないペーターは「共感覚を持たないからこそ」Pの「カジュアルな匂い」が、どの様な経路を辿って人間の脳にアクセスしているのか?という仮説を打ち立てる事が出来た







「んーーー…そうだねぇ、じゃあ、ワタシの研究の話の前に、ペーター君…君の「ワタシの匂い」の仮説を聴かせてもらおうかなぁ…ワタシの研究の話は、それからだねぇ…」

『ではまず、先生の事を知らなければなりません…この仮説は、先生の口から真実が語られなければ始まりもしないのです…』








「P」が、この研究施設に呼ばれた理由

遺伝子工学者に知らぬ者はいない、伝説の一族





「星を眺める民」であったから






「星を眺める民」は古来よりその力を使い、民族の中で、より秀でた者同士を交配させ、科学によって遺伝子操作が発見される遥か前から、より優秀な遺伝子を選別して子孫を繁栄させて来た







『先生には…』


『何が視えているのですか?』と言うより先にベン.データの口が開く


『先生も…共感覚の持ち主ですよね?それが僕の仮説です…』


ペーター『Σ( ̄□ ̄;)』


『星を眺める民…我々の世界では匂いよりも、そちらの方で先生は有名です。僕は昔から、その能力の事を考えていました』








座っている机の隅をいじりながら、ひときわ高い声で鳴くP








『先生の共感覚は、おそらくは「視覚」で認識するモノ。だからこそ「ペーター君の仮説は、ワタシがワタシのカジュアルな匂いを考察した時、正しく組み上げられるべき仮説そのモノであり、ワタシの思考にペーター君が至っていたが故に到達した仮説」と口にしたとしか考えられません。そしてその後「僕と出会えて本当に良かった」と言いました。そのセリフは「同じ共感覚能力を持った者同士」の、あるあるです』



こうなると、もはや「共感覚」を持たないペーターは何も言えない









「うわーーーー…やられちゃったやられちゃった…」



『先生には…何が視えているのですか?』



先程自分が発する筈だったセリフを丸ごと取られても、ペーターは何も言えない



(´・ω・`)ソレワタシノセリフ…