「P」は、これまでに世界に存在した数え切れない科学者の中でも、特に有名な…それも、世界的に「特に」有名な人物であった


故に「機密研究機関」であるライオンに所属した際、その存在はライオン上層部以外には決して知られぬ様、かなり厳重な対応を受ける


では何故「P」は、それ程までに有名であったのか?


「P」の呼称とさえ言われる「casual ojisan」


なぜ「カジュアルおじさん」なのか?は「P」と実際に接してみれば「ある理由から」この世界のほぼ全ての人間には分かる


Pの科学者らしからぬ、そのカジュアルな…いや、いっそ「異常」な服装は、勿論話題のネタではあったが…
単に「カジュアルな服装の人」だから「カジュアルおじさん」と呼ばれた訳ではない
特筆すべきは、そのカジュアルな服装ではない



「匂い」だ



カジュアルおじさんと一度でも会った事のある人間は皆口々に語る…その「匂い」を



「カジュアルな匂い」がする、と



「カジュアルな匂い」とは何なのか?




だいたい、ファッション用語である「カジュアル」に、なぜ感覚である「匂い」が付くのか?
意味が全く分からない
そこがまた、世界に「カジュアルおじさん」を知らしめた理由の一つ
未だ科学で誰も証明出来ない現象

































「ペーターさん…僕には…その…」

椅子でうなだれるペーターに声をかけるベン.データ

ペーターは、ため息を一つ

『はぁ…特待…本当にいるんだ…P先生の匂いを感じない人間が…』





2人の話を聞きながら、にこやかに笑い、何も語らず窓の外を眺めるP





『データ先生、私に「さん」はやめて下さい。ペーターで良いです』

「いや、そうは行かないよ。P先生も君を「ペーター君」と呼んでいるんだ…じゃあ、ペーター君と…」

『英語にその観念は無いですよ…』

「いや…それもアレだね…一応このシーンって、全部英語で話してる体だから、英語の概念とか言われるとさ、もし、この世界が誰かによって造られた世界だとすると、作者が英語全く出来ないのバレバレじゃん?」

『…まぁ、そこは…はい…では、今の話は無しの方向で行きましょう…』



Pは2人の話を聞きながら、またもや部屋のすみに移動して「うわっ」や「あれぇ〜」などという鳴き声を発している






『これまでも世界で何人か、P先生の「匂い」を感じない人間はいましたが…。しかし、ライオン内では初めてです』

故にP先生は、データ先生と今回の研究をしたいと言い出したのだと思います…が…と言いながら、ペーターは部屋のすみで虫みたく小さく丸まっているPを見る





「カジュアルな匂い」が分からないベン.データ


「研究…それもモチロンですが…その…匂いというのは、いったい、どーゆー…」

『だから「カジュアルな匂い」としか表現出来ないのですよ…』

「ほ、本当にそうなんだね…まぁ、世界的に有名だから疑いはしないし、逆にそれを感じられない僕の方がオカシイのだから…しかし…「カジュアルな匂い」って…」

『安心して下さい、履いてま…ああ、違う違う…オカシくなんてありませんよ。むしろ誇りに感じて下さい。私は、P先生の匂いを感じない人間と実際に出会えて感動しています、いや、嫉妬と言っても過言ではありません…そして…いや、そのおかげで、と言った方がしっくり来ます…』

先程とは逆の部屋のすみに移動しているPの方を見るペーター
ペーターと目が合うと、Pは一つ「うわっ」と鳴く





『「P先生の匂いを感じない」データ先生が持つ「特殊な能力」を聞いて、ある仮説に辿り着きました…それ故の嫉妬、と言うか…』



にこやかに笑うP


「んーーーっ!?うわっ、良いね、良いね良いね…とても良いよ、ペーター君…」













Pの持つ特有な「カジュアルな匂い」
それは、この世界のほぼ全ての人間が感じる匂い

学会でPが論文を発表する時など、その会場全てがPの匂いで充満する
しかし、ものの5分〜10分で誰もが感じなくなる
そんな不思議な「匂い」

その匂いに対して、甘い匂いだ、や、コゲ臭い匂いだ、などという感想を述べる人間はいない

「全ての人間が、カジュアルな匂い」だと表現する

もちろんそれは異様な事であり、科学的に有り得ない事であり、不可解そのモノ

しかし、確かに「P」からは「カジュアルな匂い」がするのだ

数々の科学者が研究をしたが、どうにも解明は出来ず現在に至る














『カジュアルな匂いは「匂いでは無い」と…いう仮説です…いや、匂いではあるが、実際に鼻腔内の嗅上皮に、におい物質が付着して嗅覚受容体が匂いを感じているのでは無い、という仮定…が、頭に浮かびまして…』

「んーーーっ!?それ、オカシイよねぇ?だって匂いは、嗅覚受容体がにおい物質に反応して起こる科学的現象だよぉ?」

『そう、そうなのですが「世界でP先生だけが、カジュアルな匂いを発する」という点に着目し、その上で、ただでさえ「特別な能力」である「シナスタジア」の、それも、かなり強いシナスタジアを有するデータ先生は「P先生のカジュアルな匂い」を感じない…ココに何かしらの関係性が無いとは到底考えられないのです…』


「うわーーーーーー!!!」


Pは大きく一つ鳴くと、ゼンマイで動くブリキのオモチャの様に動きながら部屋を一周


「うわっ、ごめんごめん、ごめん、何ぃ?」






な、なんなのだ?このおじさんは…と思いながらも、天才はすべからく変人である
そう心を納得させるペーター






『例えば宇宙に人間が行くと、強い宇宙線を受ける為に、目をつむっていてもチカチカと光が見えます。その光は網膜を通して脳が感知している光ではなく、強い宇宙線が脳の視覚野を通過するから視える光です。つまり、この世界には「受容体が感知しなくても感じる存在が在る」…故に、先生の「カジュアルな匂い」は…「何かしらの先生の力」によって「嗅上皮が感知する匂い」とは「全く異なる場所からのアクセスによって感じる匂い」つまりそれは…』




にこやかに笑うP




「科学的には「匂い」とは呼べない?」




『はい。それが私の、仮説です』






にこやかに笑うP






「さすがは、この施設の仕組みに気付き、その才能と実力で「賢者の迷宮」に辿り着いただけの事はあるねぇ…うわぁーーー……天才だ天才だ…」








カジュアルな匂いを感じる事の出来ないベン.データは、2人の会話を全く理解出来ない…が、自身の持つ特殊な能力「シナスタジア」については、自身の視ている世界は他の誰にも理解されないのだと確信した頃に調べ尽くした
そしてPは、誰にも理解されないだろうと思い誰にも話ていない「天文学に置ける人間の座標が僕には視える」事を知っていた…いや、知っていたと言うより、確信していた、と表現した方が良い…
ベン.データもまた、一つの仮説に辿り着く










「『P先生!あなたは…』」

「『!?』」



ペーターとベン.データ、同時!










にこやかに笑うP



「うわぁ〜〜……うん、良いね、良い、良い良い、とても良い…」



ペーターの様子を伺いながら……ベン.データは問う



『先生は…いったい…僕の「世界」を…どこまで理解して…』



Pはまたもや、部屋の隅っこで丸まっている



「よしっ!よしっ!よしよし!よしっ!鼻…話そうかねぇ…ワタシの「カジュアルな匂い」について…」



部屋の隅っこから戻って来るP











「世界の誰もが感じ、その上で科学で解明されない、ワタシの「匂い」の話を…」











これまで、世界中の研究者の誰もが解明出来なかった「カジュアルな匂い」
その匂いを有する本人から「匂いの話」のワードが出た事に、ペーター、ベン.データは歓喜!







「ワタシの…カジュアルな匂い…それはね…」








ついに解明される、謎過ぎる「カジュアルな匂い」!
































「ワタシは全く分からないの…うわっ、言っちゃった…言っちゃった言っちゃった…うわーー!!!」







ペーター
ベン.データ



『Σ( ̄□ ̄;)』

「Σ( ̄□ ̄;)」