開いた壁の先、真っ暗な世界が広がっている

真っ暗なので、正確には広がっているのかは分からないが
















にこやかに笑うペーター




「さぁ、行きましょう」




カメラ付きインターホンには、数字のついたボタンが0から25まで、計26個ある











0から9までのボタンがあれば、その後の10から25までのボタンは不必要では?








ペーターがいくつかのボタンを押す

やはり、0から9までのボタンしか押していない



ペーターがボタンを押し終わると、目の前の闇の世界に、縦の一本の赤い線が現れた




『お、おお!』




「施設的には「賢者の杖」という名前のシステムですが、研究者が使う呼称はただ、杖、ですね(笑」

『こ…れは?』

「ただのレーザー光線です(笑」

『関係者あるあるですね(笑』

「この先は真っ暗なので、この賢者の杖に着いて行きます。でないと、絶対に研究室には辿り着けません」

『ほお…もし見失ったら?』

「大丈夫です。一定の間隔を持って道を案内しますので、置いて行かれる事はありません」

『?』

「?」





『いや、そうではなくて、もし、見失ったら?』


ペーターはにこやかに笑う。まさに、研究者の頭ですね、と





「見失う事はありません。あり得ません。そういう作りになっています。しかし、もし見失ったらどうなるのか…分かりかねます(笑」

『なんだそれ(笑』

「入り口でそこまで追求されてしまうと(笑」

『もしこの世界が何者かによって「創造されている世界だとしたら」どれだけ書いても、物語が先に進みませんな(笑』

「そーゆー事です(笑」







賢者の杖に導かれ進んで行く







数分も進むと、目の前に広げた手すら目視出来ない闇


「少し、ここで止まりましょう」とペーター

『ペーター…普通に怖いんだけど(笑』

「おかしいなぁ…皆移動してないのかな…」







「ここから、この賢者の迷宮の注意点を説明します」

『ほお…』

「あ、やっと来た」






遠くに赤い線が見える







『アレも、賢者の…杖…?』

「そうです。つまり、他の研究者達も沢山いるので、自分達を案内する賢者の杖以外の賢者の杖が見えた場合、別な研究室の人間がその後ろにいるので、ぶつかったりしない様に気を付けて下さい。あと、研究室に着くまでのこの闇の中での私語は厳禁です。他の研究者に自分達の研究内容が漏れる可能性がありますので」

『この会話が私語そのものでは?』

「この会話は施設案内として上に届け出をしているモノです、安心して下さい。ちなみに、賢者の迷宮内での会話は全て録音、盗聴されており、危険な内容と認識された場合、賢者の杖によって研究室ではなく施設外に案内され、出た場所で拘束されます」

『ちゃんとしてるね』

「…まぁ、はい。ちゃんとしてますよ」

『ほぉーーー、凄い。完璧だ』

「注意点としてはそんな所です。では、研究室に向かいましょう」

『行こう行こう!』







カツダとペーターの会話にトリシュは少し違和感を感じた

注意点がそれだけ?光源のある映像記録媒体でも持って入れば、それで賢者の迷宮は攻略可能では?








歩く

歩く

歩く







ふ、と、トリシュ
何だ?この匂い……?……どこかで…昔嗅いだ事のある匂い…ペーターの服の柔軟剤の匂いかな…カツダの匂いではない…


遠く遠く…かすかに…何かが聞こえる…


なんだ?音…?いや、声…鳴き声?なんだ?



トリシュがペーターに話かけようとしたのと同時に、カツダが口を開く

『ペーターさん…まだ?』

にこやかに笑…っているのであろう

「20分位かかります」

『20分!?歩くの!?』

「すみません。施設内の設計を知られない為には必要なのです」

『目の前にかざした手すら見えない闇。まぁ、20分歩けば、方向感覚も麻痺するし、理に適ってはいますね』

「ご理解頂き感謝致します」


数秒の会話

匂いも声も、もう無い

やはり気のせいか………








歩く

歩く

歩く












『大きな回廊を、一定の間隔を持って回っていますね…』

「…」

『回り道して迷わせる…』

「…」

『エコロケーションが使える人間も存在しますが、その能力を持った人間がここに来れば…』

「…ミスターウーマイ、私語は厳禁と…拘束出口に案内されてしまうので、それ以上は…」




トリシュの頭に、ある人物が浮かぶ

あの人がこの場所にいたら………




『いや、私語ではありませんよ。注意喚起です。盗聴されているならば尚更です。エコロケーション能力を持つ人間は、かなり詳しく「音で世界を視る」事が出来ます。改善の余地があるのでは?と』

『トリシュ、お前らしくもないね』

『?』

『目の前に、それが無理な答えがあるでしょ?それにここは、お前の言う通り…』



カツダの話を遮るトリシュ




『目の前って…何も見えないのに……あ、そうか。だから君は、最初から光源持って入られたら終わりじゃん!とか言わなかったのか…君らしくないなと思ってはいたが…しかし、エコロケーション能力者を、あまり甘くみない方が良いのは確かですよ…』


「貴重なご意見ありがとうございます…しかし、この賢者の迷宮を攻略出来た人間は、過去1人として存在していません。心配して頂きありがとうございます。なによりエコロケーションには音が必要です。会話は全て盗聴録音されていると説明したはずです」


『トリシュは心配し過ぎなんだよ(笑』


『こんな奇妙な場所に入ったら、普通動揺して、それには気付かないだろ…君が異常なんだよ』










ペーターは震えた…

カツダ・ウチヒサ……

彼はおそらく、ここの入り口で自分が何気なく口にした「ただのレーザー光線です(笑」という一言を聞いたあの瞬間、賢者の迷宮の基本的な理屈を理解したのだろう…
しかもウーマイも、今の話の中で完全にそれを思い付き、確信している…本当に化け物だ…
特殊でもないただのレーザー光線が、縦の線を天井から足元まで引いているのだから、後から言われれば、ああそうか、そりゃそうだ、となるのは当たり前
答えを知れば式を創造するのは容易い






是非とも……欲しい

絶対に、この施設と正式契約させなければ…

彼等ならば「アレ」を、どうにか出来るかもしれない…






このドアの先に在る「アレ」を…
























『おお!?ペーター!杖が消えたよ!』

「はい、消えましたね」

にこやかに…笑っているのであろう…

「研究室に到着しました」

『ど、どうなるんだ…?』

「研究室前に到着すると賢者の杖が消えます。その場で30秒、じっとしていて下さい」









『あ!』

『おおお!!!』







壁であろう場所に赤い線がツツツツツーーーーーっと走り、扉を形取る







『カッコイーーー!!!!』

『秘密基地感は半端じゃないね』

「期待通りのリアクション、ありがとうございます(笑」






光の線の扉の中の、ここ、小さな枠がありますよね、ここは穴になっています
ここに手の平を下にして入れて下さい。指紋と静脈認証で扉が開きます
今はまだ、お二人のデータは登録されていませんので私が扉を開きます



見えないペーターが、多分手の平を入れたのだろう



眩しい光が縦の線を引いて、扉が開く














「ようこそ!研究室へ!!!」

















『こ…こ…こ…これは……』


『スゲーーーーー!!!!!』





眩しくて何も見えない!!!!!!www





「しばし、明順応をお待ち下さいwww」





















































なんとなく見えて来た…

ペーター…お前…

何でサングラスしてんだよ…

「明順応の時間、これなら必要ありませんから!wwwwww」

入る時に言えよ…

「wwwwww」