オカシイとは思ってたけどね

だね

だってペーターは、俺達の「頭の中の研究室」での研究結果を読んでいて、しかもそれを理解出来る知識の持ち主だ
俺達がどこまでの域に達しているのかも理解している
その上で「こんなレベル」の研究施設なんて案内されても、大学合格者が附属小学校を案内されてるような気分で違和感しかなかったよ

だね















「?」






ペーターが、仲間になりたそうにこちらを見ている

仲間にしますか?






とか、言いそうだよね、RPGだったら(笑

すまん、私はゲームをあまりしないので意味が分からない

………………………

ただの屍の様だ、とか言いそうだよね、RPGだったら(笑










ウチヒサの予想する、トリシュがもう一度「すまん、私はゲームをあまりしないので意味が分からない」と言うより先にペーターが話を始めた


「本来、この施設の案内はここで終わります。ましてや、まだ正式採用に同意していない人間に、これより先は見せる事もしませんし教える事もありません」








ウチヒサのRPGの話など聞いていながら完無視のトリシュ


『では、本来、の外にいる私達は、これからどこに?』










「その、本来、について、取り敢えず説明する所から始めましょうか」


ウチヒサ、トリシュ、示し合わせたように同時に『ほう…』







「ここまで案内して来た施設は、まさにお二方の言う通り、わざとレベルを低く設定した研究施設です」

『わざと…?』

「そう、わざと。ライオンに所属した研究者は、まず最初に、ここまで案内して来た施設に配属されます」

『なるほど。そしたら当然気付きますね「ちょっとオカシクないか?」と』

「そうです、そうなる筈なのです。しかし、なかなかそうならない」

『?』

「ライオン自体は機密研究機関ですが、表向きはただの国立研究機関であり、研究者達にはそれなりの年収と社会的地位が確立されています。その様な立場に置かれると人間は、満足してしまい、探究心を失うのです」


『なるほど…』


「我々ライオンは、ここまで案内して来た研究施設を「愚者の迷宮」と呼び、実際は「第2試験会場」としているのです」


『?最初の試験会場を通った覚えがありませんが?』


「最初の試験は、試験と言うより「世間一般に認められる研究結果を公にする」という事なので、私がヘッドハンティングをしに、お二方に会いに行った時点で合格です」


『なるほど…そもそも、研究者的に選ばれた人間しか入る事すら出来ない、という事ですか…』


「ですね。だからこそ、皆、自分に確固たる信念や自信があるので、その上金も貰えて自由に研究出来るという立場を得て、そこで満足する」


『そうなると…稚拙な研究施設の違和感に気付いても、頭が納得してしまう』


「頭が納得すると、心が違和感に気付いても、それを頭は修正します」


『わざわざ大金はたいて研究者雇って、殆どが気付かない…』



「愚者の迷宮からは、そうそう簡単に出る事は出来ない…故に…いや、理由はそれ以外にもあるのですが、我々ライオンは、かなり金銭的に困窮しています」


『だから、無駄な金払わなくて良いように、我々の施設見学を許したのですね…』


「まぁ、それもありますが、お二方は「特待」として迎えられると確信していたので」







ウチヒサとトリシュは顔を見合わせる


『特待?』







「はい。特別待遇です。見学時間中に施設の違和感に気付き、さらに「私の異常な行動に気付くか否か」という特別な試験に合格出来るかどうか?お二方は見事、私の異常な行動を見抜きました」


『それで、合格って事か…』


「はい」

『で…合格した我々は、これからどうなるのですか?』

「はい、ここからが本題です。ここから先、案内する場所は「賢者の迷宮」と呼ばれる場所。愚者の迷宮から脱出する事に成功した者、そして特待、ライオンの特別関係者、それ以外の人間は入る事も、その存在を知る事も許されない場所です」




『…』


「向かいましょう」






少し離れた場所






工事現場なんかでたまに見る、簡易的な家の様な施設

まさに「プレハブ小屋」






「どうぞ…中へ…」






東京ドーム3916分の1個分程の室内


「どうぞ、お座り下さい」


パイプ椅子に並んで座る2人を確認すると、ペーターは2人の向かいに座り、鞄から書類を取り出す



「では…この書類をお読み下さい」







こ、れ、は…


トリシュ…これは…ちょっと…






にこやかに笑いかけるペーター

「この書類は本来、ライオンと正式契約する方にのみ渡される書類であり契約書でもあります。しかしお二方は「見学者」であり、ここにサインをしたからと言って正式契約とは扱いませんので」

極めて、優しく、親が子を悟すかのように笑いかけるペーター






それにしても…


コレは…






書類の内容を簡単に言えば「ここから先のいかなる情報も、施設関係者以外には一切伝えてはならない。もしこの契約に違反した場合命の保証はない。死んでも文句は言わせない。そして、伝えられた者の命もどうなるかは分からない」




あり得ない契約内容



こんな契約、絶対に結ぶ訳はない




常識的な判断ならば











「トリシュ…どーする?」

『良いんじゃない?』

「だよね、普通に考えて」

『ありがたいくらいの条件だ』



常識的な人間ではないから、ここにいるのだ



「外部に漏らせば命を獲られる程の研究」に、2人が興味を抱かない筈はない
そもそも、この天才2人は、自分の命になど大して重きを置かない
逆に「漏らさなければ安全は保証される」のだ
アマゾンの奥地に研究に行くのに比べれば、こちらから頼みたいくらいにしか感じない






2人はその場で書類にサイン




















ペーターは少し驚いた、と言うか、引いた

こいつら…躊躇もしないのか?本当に…オカシイ…から、世紀の天才…なのか…?
さっきの試験だって「絶対に気付かないであろう」と想定して行ったモノだった
私が行った試験は、相手の行動に対して同じ行動を本能的に行うミラーリング効果において、本来本能的行動である筈の私の行動内容に、明らかに意図的行動が加わっている事に気付けるかどうか?というモノ
まさか気付くまいと、ミラーリング効果に逆らって私が、ウーマイ氏の傾けた頭の方向と逆の方向に頭を傾けた瞬間、カツダ氏は一撃で私を疑わしい目で睨んだ…ウーマイ氏はまだ、疑いの目では無かった様に感じたが…
次いで、わざと万年筆を落として、一瞬、待った
これでカツダ氏が確信するのは想定内だったが、先に万年筆を拾ったのはウーマイ氏、ウーマイ氏の右手から差し出された万年筆を左手で受け取ると、そこで既にウーマイ氏も「確信」を得ていた、確信した目だった…
こいつら…どういう頭で、どういう目で、この「世界」を認識しているんだ?













書類に記された2人のサインを眺めながら、何かを思考しているペーターに目を向ける2人


『?』


「?」


『??』


「あ、いや、すみません!なんでもありません!サイン有難うございます…では、この先、全ては内密にお願いします」




ペーターは、小さなプレハブ小屋内の壁に取り付けられた、カメラ付きインターホンの様な物の一部に指を付け、次いでカメラを片目で覗き込む
そしてパスワードらしき言葉を発する



とたん、壁の繋ぎ目が大きく開き、その先にまた壁が現れた

壁には四角い穴が空いており、そこにペーターは手を入れる
認識音がするとペーターは穴から手を出し、そして数秒







スーーと、壁が開く














Σ( ̄□ ̄;)

Σ( ̄□ ̄;)





『ちょっと待て!ここはただのプレハブ小屋の筈だぞ!』













開いた壁の先には、先の見えない真っ暗な道が続いている
真っ暗なのだから、続いているのかは分からないけれど













『こんな空間、プレハブ小屋の外観から物理的にあり得ない!Σ( ̄□ ̄;)』


ペーターはにこやかに笑いかける


「ええ、外からは、プレハブ小屋に隣接して建てられているこの建物も、この空間も、人間の目では認識する事は出来ません。特定の周波数以外のレーダーにも映ることはありません。ライオンの開発した光学迷彩と、特殊素材による電波吸収によって可能となった「目でもレーダーでも認識出来ない建物」です。もちろん、触ればバレてしまいますが」


『あり得ない…特許…いや、ノーベル賞いくつ獲れるか分からない…』


ペーターは笑う
あはははは、と、声を出して笑う


「50年先の科学がライオンにはあるのです。特許など取らなくとも、しばらくは誰も開発は出来ません。それに、ノーベル賞など受賞しようものなら、我々の研究が外に漏れますので」


『特許もノーベル賞も度外視…そりゃ、研究費用の枯渇も無理はないですね…』


ペーターは二度笑う


「逆ですよ。特許もノーベル賞もない。誰にも知られていない。だから、高値で売れるんです」












なる程…

トリシュ、ウチヒサは心から、この機密研究施設の意味を理解













2人は震えた








無論、恐怖などではなく、未知の世界への探究心から































さあ、行きましょう。ライオンの深淵


賢者の迷宮へ


既存の科学の、外の世界へ

























































「ペーター」

『はい?』

「ライオンの発明した光学迷彩とか電波吸収特殊素材とか、高値で売れるとか言ってたけど、どこで売ってんの?」

『Amazonですよ』

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