さて…今日はマグロでも釣っちまうか!?
行きましょう!マグロ!
マグロは夢っすねーー!
マグロじゃなくて良いから!何でも良いから釣れろーーー!!!




快晴の空の下、船は進むよどこまでも


あ!ナブラ!あそこあそこ!!
よっしゃ!!!ナブラへ向かって最高速度じゃあああああ!!!!


揺れる船の上


何で…ナブラって呼ぶんですかね?

え?何だろね…ボイルとも呼ぶよね

いや、それなら分かるじゃないですか、水面が湧いてるみたいだから

一説によると「なぶる」から来てるらしいっすよ

なぶる…

そう、なぶる。餌の小魚を、捕食者の大物がいじめてるみたいだから、なぶってる感じで、ナブラ

ほーーーー






着いたぞ!!!!

よっしゃーーー!!!!!

ナブラに向かって投げろおおぉおぉお!!!!!

イエーーーーッス!!!










何なんだ?ナブラって?
語源何よ?

小さな疑問

小さな小さな疑問から…






物語は、始まる
















































「何度来ても、ココは本当に広い」
『国をあげての研究施設だ、当然だろう。むしろ、毎回驚く君の思考が理解出来ないよ。このくらいの施設があって当然だ』
「まぁ、それはそーなんだろーけど、俺は小さな小さな島国から来た身分。やはり、スケールの違いには驚く」
『日本、か…一度は行ってみたいよ。世界で最も美しく、偉大な歴史のある国だと私は思うよ、Mr.ウチヒサ』
「君がそー言ってくれると、誇りに思うよ、Mr.トリシュ」





2人はバカデカい研究施設の入り口に立つ






「お二人様。そろそろよろしいでしょうか?」

『あっと、申し訳ない。行きましょう行きましょう』



案内役に連れられ、2人は大きく口を開けた門をくぐり施設内へと進んで行く



隣同士並び、進んで行く
今日、今、この時、その門をくぐるまでは、ずっとずっと隣同士で、進んで来た


星と星

空と海

空に輝く星空と、海に輝く星空

空と、空を写した海



「世紀の天才」と呼ばれた2人の間には、その瞬間から、星と星が分けた、何かがあったのだと思う




「なぁ、トリシュ」
『?』
「双子座流星群って、矛盾してるよな」
『双子座の流星群だろ、なにも矛盾は無い』
「双子なのに、流星群でバラバラだ。これは矛盾以外の何でも無い」
『だから矛盾はしてないって』
「だいたいがさぁ、双子座もオカシイんだよ」
『星座にまで文句つけるのか?』
「双子座のシンボルマーク知ってる?」
『?すまないが、星座についてはあまり詳しくはない。ラテン文字の2…だったと思うけど』
「そーーー!それ!当たり!さすが!ただのラテン数字…まぁ、ローマ字の2で、双子なのよ!」
『?』
「安直過ぎない?つまらないよ。神によって創られた星座のシンボルマークが、ただのローマ字って」
『…』
「んじゃ、魚座のシンボルマークって知ってる?」
『んんん?2匹の魚が、尾を繋がれた様相…かな?』
「何でも知ってるね!さすが!だからさ、魚座こそが双子座だと思うんだ!魚の命と呼んでも過言ではない、尾を共有している。まさに運命共同体!」
『それを言うなら蟹座だろうよ。蟹座のシンボルこそ、双子に見えるが?』
「違う、アレはタオだよ、タオから来てるんだ」
『タオ?中国思想の道教のタオ?』
「そう、道、と書いてタオ。蟹座のシンボルは、タオの陰陽太極図その物だ」
『日本語の解釈が難し過ぎるんだよ。と言うか、日本語は曖昧というか解釈の仕方が多過ぎて効率が悪い。日本語の悪い所の良い例だ』
「良い所だ。と言ってほしかったな…あ、待てよ…悪い所の良い例ってのも、オカシイよな…」
『その辺りに疑問を持つのは、多分日本人でも君だけだ。そして「悪い所の良い例だ」は、なにも間違ってはいない。ほぼ全ての人間がそこまで考えてはいないから……まぁ、君に言っても無駄か…逆にいつも通りで安心したよ。さあ、ラボに着いたぞ』
「オカシイ事はオカシイ。そう言いたいだけなんだけどね…」






とある国によって秘密裏に創設された研究機関
表向きは、ただの国立研究機関






「ライオン」







人間に動物の組織を移植して、戦闘兵士を創り出そうという研究機関
人間を兵器にしようと目論むその研究は、当然ながら倫理的に許される訳は無く、研究者、及び開発機器担当を集める事が出来なく、ほぼ破綻しかかっていた


そこで目を付けられ、金と研究施設の充実の程にノコノコとやって来たのが「世紀の天才」

ウチヒサ.カツダ
トリシュ.ウーマイ

の2人


遺伝子工学の天才タッグであり「DNAの劣化分裂の阻止」によって、史上最年少でノーベル賞を受賞した研究チームの代表2人である



簡単に言うと「ガンの特効薬を開発」した2人



そんな彼等が呼ばれる事になった理由、そして、十分に遺伝子工学を極める事の出来る環境がいくらでも他にあったのに、わざわざ怪しい研究機関「ライオン」に所属を決めた2人の理由



二つの理由が一致したのを説明するには、少しばかり時を遡る事になる



ウチヒサ、トリシュの2人が研究機関「ライオン」の門をくぐる、10数年前


































「ライオン」では、主に「人体移植」の研究ばかりしていて「遺伝子工学」の知識が乏しかった

人体に他の人体の組織を移植する場合、絶対に避けては通れない問題がある
それが「移植免疫」と呼ばれる拒否反応

人体同士の移植でもそんな拒否反応が出るのに、別な動物と人間との移植など出来る訳がない
だからこそ歴任の研究者達は「遺伝子工学的見解とその研究」に頭を悩ませる日々


そこで白羽の矢が立ったのが、遺伝子工学の世界で知らぬ者はいないと言われる「星を眺める民」の純血統である、とある男だった


「星を眺める民」
彼等は海に生きる南方の小さな島に住む民族だが、特殊な力を持っていた為に、遺伝子工学の世界で特別な民族として扱われていた
その力こそ「進化に、より適した遺伝子を持つ生物を感覚的に見極める」という力
人間と猿の遺伝子の違いは1%程と言われている
さらに、自分と他人の遺伝子の違いは0・1%程と言われている

完成された肉体美を持ち、日々メディアで大きな影響力を持つ芸能人と、その芸能人の事を毎日調べ、コンサートに通い、少ない給料をすり減らしながら限界ギリギリで生きるデブで気持ち悪いオタクの遺伝子は、0・1%しか違わない

そんな両者が、たった0・1%しか違わないとは、人類とは、なんと平等な生命なのだろう



少し話がそれてしまいました
戻しましょう



「星を眺める民」は古来よりその力を使い、民族の中で、より秀でた者同士を交配させ、科学によって遺伝子操作が発見される遥か前から、より優秀な遺伝子を選別して子孫を繁栄させて来た


その「星を眺める民」の中の一人の男に、白羽の矢は立ったのだ



名は…「ライオン」上層部以外、誰も知らない



「ライオン」の表向きは、ただの国立研究機関
普通の研究者の情報は公開されていたが「特待」として迎えられた人間の個人名を明らかにする事など、当然有り得ない

秘密裏の研究機関がさらに秘密裏に迎え入れる天才達、通称「特待」には「アルファベット」の称号が与えられた

その男は16人目の「特待」だったので、英語アルファベットの16番目「P」と呼ばれる事になる

余談だが、12人目の「特待」は、後に日本で起きる、世界を巻き込む大量殺人事件の犯人を特定した事で、その事件関係者の間では伝説として語り継がれている


また、話がそれてしまいそうになりましたね
戻しましょう


16人目の天才「P」その天才は、天才と呼ばれるより「化け物」と呼ばれた


それまでの「ライオン」の研究のほぼ全てを否定し、しかもそれを「証明」して見せた



「証明」



それがどれ程残酷な事なのか、数学者ならば痛い程分かる

「証明」とは「完全なる否定と肯定」

当時の「ライオン」には、あらゆる分野の天才達が集められていた

しかし「P」による、今も語り継がれる「無双の証明」によって、全ての「アルファベット」達が「ライオン」から去る




「無双の証明」



それは「数学的証明」



全ての「証明」は、その証明の観測者が存在しなければ成立しない、ただし、数学を除いては








例えば、歴史。歴史の証明がしたければ、その時代の文化や遺物を発見し、公表すれば良い

例えば、物理。物理の証明がしたければ、その物理法則を観測者に見せれば良い

例えば、医学。医学的証明がしたければ、患者を治せば良い


そして「数学的証明」


数学だけは、違う


この世界が「無い」と前提としても「証明」が出来る

数学は、この世界の全てが存在せずとも証明する事が出来る

それが「数学的証明」


さらに、数学的証明は「哲学的証明」にだけは理論的に反論出来ないとされていたが「P」は、その壁をも超えてしまった


手に負えない天才「P」



「無双の証明」




選ばれた天才集団「アルファベット」はライオンから撤退




ライオン自体もこの事態を重く受け止め、Pの処分を考えたが「証明」されてしまっている以上、正しいのはPである為言及が不可能であった
その日より、16番目の「P」を最後に、ライオンは「アルファベットの称号」を無くし「特待」は「特待」とだけ呼ばれる事になる






かたやPはそんな事など全く関係無しに、自室でこの研究機関の未来を、公式に当てはめて計算していた


アルファベットが消えた今、ライオンは壊滅的な被害を受けた(自分のせいだけど、まぁ、そこはどうでも良い)
さて、この先、バカばかりのライオンで、自分に出来る事は何なのか
まず、ここでしようとしていた研究はもう無理だ
ならば、この先で新たにライオンに所属、関わる事になる天才達に、自分が何を遺してやる事が出来るのか?


すでに、もう若くなかったP


この先の未来「遺伝子工学」の研究が主になる、絶対に


今は移植ばかりだが、移植ではなく、遺伝子操作が必要なのは明らか
バカ達もすぐにそうと気付くだろう…








目の前の数匹のマウス

「遺伝的欠損」を植え付けられ産まれて来た実験用マウス

少し離れた場所に飼育される、健康体マウス


キラキラ、キラキラ

キラキラ、キラキラ


優れた遺伝子は、美しい


その煌めきは、海の持つ輝きの様



その瞬間、Pの頭の中の公式は、一つの応えをPに語る



「なる程…そうなるのか…」



真の天才は、答えを考える事はない

公式は勝手に次の公式を広げ、その公式はさらに広がって行く

それはまるで、大海に広がる波紋の如く、全てに影響を与えながら

頭の中の宇宙である公式は、ある日突然終末を迎えるのだ

天才はその終末を、ただ迎い入れるだけ

それが、答えと呼ばれるのであり、凡人の計算の「いちぷらすいちいこーるに」とは根本が違う


凡人は計算する。そして答えを導き出す
天才は公式に問う、そして公式の応えを理解する




化け物「P」は、久し振りに白衣を脱いで、アロハシャツに袖を通す


「うわっ、やっぱり良いねぇ〜。コレは。うん。うんうん。何で皆白衣なんか着て研究するんだろうねぇ?おかしいよねぇ?」


およそ研究者としては不相応なカジュアルな服に着替え、Pは、ついに動き出す









「マザー」の開発へ











10数年後、世紀の天才2人が、その装置の恐ろしい程の利用価値に気付くまで、誰も理解が出来なかった装置










「マザー」












ああ!「マザー」!!!!!!
会いたかったよーーー!!!



興奮するウチヒサに、トリシュは冷静に言う



「マザー」か…誰が作ったのかも分からない、と言うか、教えてもらえない…
しかし、確かに、凄すぎる



でしょ!!!「マザー」は凄すぎる!!!
「作った」とか「造った」では表現出来ないんだよ!
コレは…誰かが「創った」んだよ!!!



だからさ、日本語は面倒で、効率が悪い

















「マザー」



世紀の天才2人により、物語は始まる