うん、良い朝だ!

週末の釣りを楽しむ為にも、今日も仕事行くぞーーー!!!!

大きく背伸びをして体を伸ばす良久





「んじゃ、行って来まーーす!」

『ちょ、ちょちょ!ちょっとあなた!それ!』


妻の智子は良久を止める


『それ、こないだ買った秋物のジャケットじゃなくてライフジャケットよ!』

「?」

『?あら、仕事用のライフジャケットでしたか(笑』

「寝ぼけてるのか?(笑」

『いや、てっきり、こないだ買った秋物のジャケット凄く気に入っていたから、今日着て行くものかと(^^;』

「www」





ここ数年で、釣り人のライフジャケット着用はどんどん当たり前になり、会社にライフジャケットを着て行く事も、釣り人の安全管理として当たり前に社会に認められる様になって来た
素晴らしい時代が来たモノだ

釣りが趣味です、などと会社で上司に言おうものなら、通勤、勤務時にライフジャケットを着ていないと釣り人としてのマナーが無いと判断されてしまう
もちろん、毎日絶対ライフジャケットで会社来いよ!という程ではないが



会社に向かう為車に乗ると、後部座席にいつも一瞬ギョッとする

後部座席に乗る、何故くれたのかは分からないが、嫁の父親がくれた「実物大の朝青龍の人形」に…

嫁の父親の話では「乗り物の神様」だそうで、電車とかの公共交通機関以外では、必ず一緒に乗りなさい、との事…めっちゃ重いし邪魔なのだが、まぁ、言い付けは守ろう…

智子は「もーーーwww父さんの話なんか無視して良いのにwww」とは言うが…まぁ、頑張れば運べない事もないし…

良久は、そんな辺りが非常にマメで真面目な性格であった
マメで真面目で注意深く、観察する事が得意
その性格が、後に悲劇をもたらすのだが…












「ただいまーーー!」

『お帰りなさい(*´∀`)』

「もう秋とは言え、まだまだ昼間は暑くなる事があるなーー!ライジャケで営業の外回りはキツイ!」

『んふふ…』

「?」

『ご飯にする?お風呂にする?そ、れ、と、も…』

「もちろん!ライフジャケットにするよ!」





この会話は、筆者の私ですら謎
ライフジャケットにする、というのがどーゆー意味なのか全く分からない
この物語の2人にとって、多分、なんか意味があるのでしょうが、私にも理解は出来ません
なんだよ、ライフジャケットにするよ!って、何すんだよ、仕事から帰宅してすぐに。アホだろ
ライフジャケットの整備とかか?




良久は、ちゃんとライフジャケットをして、風呂に浸かり、飯を喰う




だから「ちゃんとライフジャケットをして」って何だよ










「うん!今日のご飯も最高だ!毎日ありがとうな、智子(*´∀`)」

『それが私の仕事ですもの(^^それよりぃ〜今日はね、よっくんにプレゼントがあります!』











余談ですが筆者は「渡辺」という苗字の方の呼ばれ方は、8割が「ナベさん」だと思っています
そして、良久、義弘、良和、義男…えとせとら…名前の頭に「よし」が付く方の呼ばれ方は、8割が「よっ君」だと思っています
吉宗だけが「将軍」だと思っています










「お?え?なになに!?」

『ライフジャケットって、やっぱりムレたりするし、着心地悪かったりするじゃん?』

「まぁ…な…慣れたけど」

『じゃーーーーーーん!!!』

「お!?おお!?新品のライフジャケット!」

『これは凄いよ!!!』

「どこのメーカー!?ダイワ?新発売のヤツ!?」

『ダイワの新製品だけど、それに、私が改良を加えた特別仕様だよ!!!(*´∀`)』

「お、お、お、お!?マヂか!!!!」

『浮力素材はそのまま使用して、通気性を完璧にした、まさにmade in 智子!だぞ!(*´∀`)』

「す、SUGEEEEEEEEEEE!!Σ( ̄□ ̄;)」

『明日は当然、夢のバスプロになる為の釣りに行くんでしょ?着て行ってね!!!』

「そんなん作ってくれたら萌え…あ、いや、燃えるわ!!!( ;`ω;´)」











翌朝早く、良久は釣りの道具をクルマに積みながら、もんもんと考えていた

ここまで3回戦まで勝ち進み、来週末開催されるバス釣りトーナメントで勝てば決勝進出
そこで勝てば、夢にまで見た…バスプロへの道がハッキリと現実的になる…

最近は本当に「バス」という言葉に過敏になり、営業の移動でバスに乗る時など、バス停で隣の女子高生が電話で「バス来ないんだけどーーー」などと話ていると、今日の天気だと、バスは浮かぶ…ルアーはポッパーで決まりだろう…しかし停留所の地形から考えるに…所々にある道路の沈んだ場所にバスはいる…そうなればゼロダンで底を攻めるのがベター、しかし、沈み気味の地形の良さを生かしてジグヘッドでも良いかもしれない…
いや、しかし待てよ、狙うバスは相当大きいだろう
湖にいるバスとはレベルが違う…
バスの重さは、おおよそ15トン…桁外れな重さだ…15トンの獲物を釣り上げるには…30ポンドのPEだと13キロちょい…足りない…35ポンドなら16キロ弱…よし、35ポンドPEの1000倍、35000ポンドPEなら上げられる!!!…し、しかし、35000ポンドのPEなどどこで手に入れれば…35ポンドのラインを編み込めば可能…か?
そう考えた瞬間!




女子高生「バスキターーーー!!!」




バ、バカな!!!!!35000ポンドのPEなどどこで手に入れ………!!!!


いや、そーーーーーじゃねーーーーーよ!!!


い、いかん、いかんいかん!今は仕事だ、釣りではないのだ!!!

という、釣り人ならばすぐに理解して頂けるであろう、釣り人あるあるに悩まされる毎日



そんな毎日に、終わりを告げねばならない!!!



良久が家を出ようとすると、起きたばかりの眠そうな智子が現れる



「私の作ったライフジャケット、ちゃんと着てね!」

『おうよ!ありがとうな!行って来るぜ!』



途中、渋滞の車の中、智子の作ったライフジャケットをマジマジと観察…



コレ…マヂで凄いな…ダイワの新作のライフジャケットって言ってたから、アレか…アレを分解して作り直したんだろうけど…智子の奴、裁縫の才能がある…
しかも、ポケットの数やサイズ、位置に至るまで、釣り人の事を心から考えて作られている…

コレなら、オリジナルブランドとしてイケるのではないか?
俺がバスプロになって、智子が俺のライフジャケットを作る、そうなれば、喰うに困る事はない…
もし、バスプロの夢が叶わなくとも、これまでの釣りの経験と智子の才能で、今までに無かった、新しい時代のライフジャケットを製作し、より、多く人の命を助ける事が出来るかもしれない…




良久の未来は実に明るい




きっと、この物語はハッピーエンドになる













しかし








途中、釣具屋の横を通りかかったのが良くなかった


マメで真面目で注意深い


良久は、智子のライフジャケットが万一沈んでしまったら…と、考える



この時の良久の思考は、書き手である私にも理解ができない
まずね、ライフジャケットが沈む意味が分からない
だって、完璧なんでしょ?智子さんの作ったライフジャケット
んじゃ、それ着りゃ良いじゃん?意味が分からない




しかし良久は、どうしても気になる




だから!何で気になるんだよ!!!

「いや、すんません…」

『いや、良いんだけどさ』

「はい…」

『!?あれ?お前良久だよね!?俺に書かれてる良久だよね!?』

「まぁ…はい…」

『え?いや?え?おかしくね?お前は、俺の書いてる物語の主人公なの!言わば、俺はお前の世界の神なの!神に話かけるとか、お前凄いな…』

「いや、本当すみません…で…俺、死ぬんですか?」

『Σ( ̄□ ̄;)ちょ、お前さ!前代未聞だよ!書き手に書かれてる登場人物が書き手に質問するとか前代未聞だよ!』

「あ、いや、さすがに気になるので…」

『ここでお前に言ったら、読者にオチバレるでしょ!?言える訳ないだろΣ( ̄□ ̄;)ってか、普通に話すのやめろ!』

「そうか…死ぬのか…俺…マヂか…」

『いや、だからやめろって、そーゆーの…』

「いや、良いっす…腹、決められましたから…」

『いや…だからさ…』

「いやいや、良いんすよ…」

『いや、死ぬとか言ってねーーし』

「冒頭で、俺の真面目さが悲劇を…とか書いてるし…絶対死ぬじゃん俺…」

『Σ( ̄□ ̄;)え?そっから!?そっから読んでんの!?』

「あ、もう良いですか?ライフジャケット買って行くんで…」

『だから!ライフジャケットはいらねーだろ?って!』







何の為にライフジャケットがもう一つ必要なのか…全く分からないが、良久はライフジャケットを購入

明らかに無駄だろ…



「うるせぇ、書き手…」

『普通に話かけて来るのやめて…』




そうこうして釣具屋を出て、釣り場に到着する良久

「いらっしゃい!良久さん!」

『どーーもーー(^^』

行きつけ…と言うか、バスプロトーナメントの正規登録貸しボート屋


「次で勝てば決勝!燃えますねぇーー!!」

『はい!!!燃えてますよ!!!』


実はそれ以上に、昨夜の智子の裸ライフジャケットに萌えたのは内緒だ



「船引いて来ますので、準備しながらお待ち下さーーい」

『よろしくお願いします!』








さて、準備準備…




タックルOK

ルアーも…うん、本番で使うのはこの辺りだろ
替えのスプールも大丈夫

あ、そうだ、アレを車から持って来ないと…地味に重いから毎回大変だが…しかし「乗り物の神様」だからな…

そ、し、て、ライフジャケーーーット!!!
ふふふ…この智子が作ってくれたライフジャケット、こんな大切なモノが沈んだら、自分が湖に沈むより気分沈むわ
智子のライフジャケットに、買って来たライフジャケットを着せて、と…

うん、OK(*´∀`)

俺もバッチリジャケットは着用!



「ボート!出せますよーーー!!!」

『あざーーす!』



あいよあいよと荷物を積み込み、最期の荷物


「それ…毎回、何に必要なんですか?めっちゃ重い」

『いや、何だと聞かれると…乗り物の神様…らしいんですよ…』

「?」

『(^^;;』

「いや…別に良いんですけどね(^^;;(コレヤバい奴だわ…)」

『では!出発ぅーー!!!』

「ガチでお気を付けてーー!!!」







軽快に進む船









「釣ったるぞーーーー!!!!!(*´∀`)」








数百メートル程進んだ時、悲劇は起こる


本日は風無し、無風のベタ凪、静かな湖…の筈であった。いや、それは間違い無かった
確かに、その通りだっだ…のだが…



山から吹き下ろす強烈な風が船を襲う



山間の湖でボートに乗る場合、山からの風は常に警戒しなければならない
天気予報では決して予報不可能であり、ボート場の管理人ですら予測は不可能


しかし殆どの場合…と言うか、まず、絶対と言って良い程、当たり前だが、湖のボートはそれに耐える設計になっている


当然良久もそれは熟知していたが、揺れた船上でバランスを崩し襲いかかって来た「乗り物の神様」事、実物大の朝青龍のツッパリがアゴに決まる事までは予測出来なかった!!!









強烈な朝青龍のツッパリ!!!




行司「勝ぉおおーーー負ぅうう!ありいぃい!!!」



どっから出て来た行司!Σ( ̄□ ̄;)









船上という土俵から落水した良久



「良い……ツッパリであった………」









お前も既に諦めてんじゃねえぇ!!Σ( ̄□ ̄;)




船は実物大朝青龍のせいで完全に転覆

落水した良久




「ふ…ふふ…しかしぬるいな朝青龍…俺はライフジャケットを着ている…勝負はまだ終わっては…!?あ!あああ!!!あれえぇぇっ!!?コレは!!!???ライフジャケットじゃない!秋物のジャケットだ!!!!!」



何という悲劇であろうか…



いや、しかし「事故」とは、そうだから「事故」なのだ
「完全に準備した」と確信していながら、何か一つの見落としが起こすのが「事故」なのだ…


仕事に行くのにライフジャケットを着て行く良久が、本当にうっかり「釣りに行くのに秋物のジャケットを着て来てしまった」


まさに「事故」


食う物無しでは3週間
水無しでは3日間
空気無しでは3分間
コレは有名な「生命維持の3の法則」


しかし!安心しろ良久!!!
人間が落水した際の「体温維持不可能状態」の「3の法則」は「3時間」である!


「3時間」!


船が転覆したのは船着場から、たった数百メートル!


全然余裕で助かるぞ良久!!!


ってか、普通に泳げ!大丈夫!助かる!!!











水面に、何とか浮かぶ良久








「ふっ…ふふっ…良い…人生だった…」








いや!違う違う!!!Σ( ̄□ ̄;)
泳げって!全然船着場まで行けるから!!!
ってか、浮かんでんだろ!?普通に息出来てるじゃん!
全然大丈夫だって!











「マズい…そうだ、俺は落水したんだ…このままでは溺れてしまう…息を止めなければ…」






その余裕があれば分かるだろうが!!そのままで良いの!溺れてないの!!息止めなくて良いの!!!
Σ( ̄□ ̄;)










近くに「あのライフジャケット」が浮かんでいる





智子…ありがとう………





ライフジャケットを着せた智子の作ったライフジャケットを抱きしめる良久








良し!助かる流れだ!(^^










良久は、こんな事もあるかもと考え、常に水中でも書けるペンと紙を持っていた
いざという時に、最期のメッセージの残せる様に…
先日、サウナに4時間入って死にそうになった時も一筆書けたので、そのペンと紙の性能は疑い様がない










違う!!!そーーーじゃない!!!
サウナは出れば良いし、今は普通に浮かんでいれば良いの!!!Σ( ̄□ ̄;)








「智子へ…俺、この落水から生きて帰れたら…お前と…ライフジャケットの会社を作るんだ…だから、絶対に死なないよ。愛してるよ、智子」

抱きしめるライフジャケットのポケットにその手紙を入れると、良久は深く息を吐き、そして深く息を吸い


























息を止めた
































普通にライフジャケットを抱きしめて浮かんでいれば、おおよそ、3時間は生存可能



15分後、救急隊からすくい上げられた良久は既に死亡していた




死因は「息を止めた事による窒息死」














何という、悲しい物語であろう…

ライフジャケットと間違えて秋物のジャケットを着て釣りに行くと、この様な悲惨な事態を招くのだ…


いや、違う、良久がバカだったから、こんな悲劇を招いただけなのだ


































智子、良久の両親はもちろんの事、智子の両親も、泣きに泣いた

冷たくなった良久の横に、静かに置かれている、智子の作ったライフジャケット

智子は、自分の父親を責めに責めた

「なんで…なんでよ!!?なんで実物大朝青龍なんて渡したのよ!!!あの実物大朝青龍さえ無ければ!実物大朝青龍さえ無ければ!!!…う、ううう…」

『すまん!本当にすまなかった智子!本当に…ううう…』








冒頭の
智子『ご飯にする?お風呂にする?そ、れ、と、も…』
の下りで
良久「もちろん!ライフジャケットにするよ!」

に代表される様に、こいつ達が何を考えているのか、書き手の私ですら全く理解出来ません。意味が分かりません
なに?「ライフジャケットにする」って
なんで実物大朝青龍?もう、突っ込んだらキリがありません








そっと、良久の横にあるライフジャケットを抱きしめる智子
フックなどが危険な為ルアーは全て取り出してあったが、智子が握り締めたポケットに、何かが入っている感覚がある

取り出してみるとそれは、一枚の耐水性の紙










「智子へ…俺、この落水から生きて帰れたら…お前と…ライフジャケットの会社を作るんだ…だから、絶対に死なないよ。愛してるよ、智子」


智子は耐えた…しかし、嗚咽を抑えきれない…

どうして、良久は死ななくてはならなかったのか…

これから、沢山の沢山の未来があったのに

憎い…朝青龍が憎い…



泣きに泣き、どんどん衰弱して行く智子



「う、ううう…涙が止まらない!!!ダメ!!もうダメ!!!」

『と…智子!?』







「う……」









『ま…まずい…まずいぞ!!!』
















うん、かなりマズいね
突然の事故、夫を失った悲しみ
智子さん、マズいね。すぐに専門の医者に連れて行くべきだ!!!
あと、朝青龍は何も悪くない















『親族揃って馬鹿野郎共め!!!狼狽している場合か!!智子は自分の涙に溺れて死にかかっている!!ええい!もう良い!私がやる!!!』













さすが父ちゃん!!!!!
早く、早く智子さんを医者に!!!!!


















『うおぉおぉおぉっ!!間に合ええぇえぇえぇええええ!!!!!』

























行けええぇえ!父ちゃん!!!!実物大朝青龍の罪を償うんだ!!!
病院へ急げえぇえぇええぇえ!!!


































智子の父親は、ライフジャケットを智子に着せる!!!







いや、そーーーーじゃねーーーーーだろ!!!
Σ( ̄□ ̄;)








































「うっ!!はっ!はぁはぁ…はぁ…ありがとう…ありがとう…パパ…」





助かるんだ!!!!Σ( ̄□ ̄;)

もう勝手にやってろ馬鹿野郎共おぉおぉおぉっ!!!!!!!!Σ( ̄□ ̄;)