マズい…非常に、マズい


営業時間、残り45分…


45分で、12960円以上を売り上げなければ、夢にまで見た…いいや、夢なんかで済むものか
朝起きても、昼飯喰ってても、風呂入ってても常に見ていた

「本店への栄転」の夢が途絶えてしまう!


常に夢を見続ける事がどれ程困難で、どれ程苦しいか誰に分かるというのだろう?


始まりは小学生の頃


俺の親父は常に「男ならば夢を見ろ!常に夢に向かって前進し続けろ!」と言い、夢を見ない男は男ではない!とまで言う人間だった


親父の熱い教えに、子供であったが故「そうか!男は夢を見なくちゃイケないんだ!夢を見続ける男はカッコいいんだ!」と心燃やす!






俺は!夢を見る男になる!!!!!





結果






とても良く寝る子供になった









何せ、親父が言うには「夢を見続けなくてはいけない」との事なので、朝だって、どんなに起こされようが、そう簡単に起きる訳にはいかない

何でこの子はこんなに朝起きるのが苦手なんだろう?と、両親は俺を心配し、病院にまで連れて行く有様

俺は胸を張った

「親父!見てくれよ!俺!病院に行く程夢を見てるんだぜ!」



学校の授業中も睡眠を欠かす事はなく、俺はいつも夢を見続けた

私の夢を妨害しようとする教師に、怒鳴られたり廊下に立たされたりもしたが、義務教育を終える頃には、それでも寝続ける術を会得

高校では、その独自の理論を展開し、眠りながら学問を習得する術を民衆に会得させ、親父の教えである「夢を見続ける事こそが大切なのだ」という教えを広める為の「睡永部」を自ら設立

大学ではその経験を生かし睡眠を専門に学び、卒業と同時に「睡眠具スクール」を設立

今考えれば「睡眠具スクール」ではちょっとカッコ悪いかなぁ?と思い、流行りの横文字で「スイミングスクール」と名称を変えたのが最大の誤りであった事は後に理解する事になる








結果







大失敗をした






「スイミングスクール」に入れたのに、全く泳ぎとは関係のない事ばかり教えられる

息子が寝だした

娘が朝起きなくなった

子供が昼寝しながら学年トップの成績をとっていて気持ち悪い

息子が明らかに寝ているのに100メートルを11秒台で走る様になった。夢遊病で医者に診断させたいのに、とても追い付けない


などなど、クレームの嵐で廃業を余儀なくされてしまったのだ




親父はもう亡くなってしまったが、親父の熱い教えは今でも俺の中で燃え続けている
もっとも、親父は死の間際、もはや自分の熱い思いすら理解出来ない状態になってしまっていた
今でも、親父の最期の言葉を昨日の事の様に思い出す




「夢を見続ける事の意味を、ここまで履き違えるとは思わなかった」



親父の靴下が左右逆だったので、多分その履き違いと、夢の話がゴッチャになってしまっていたのであろう



ありがとう、ありがとうな、親父…




だからこそ!!!




あと45分で12960円!!!!売り上げなければ、夢にまで見た、夢を見続けた、俺の栄転が水泡に帰す!!!
諦める訳には行かないんだ!!!!



スイミングスクールを廃業した後、ひょんな事から入った釣り具業界
ようやく頂点である本店まで登りつめる事が出来そうなのに、残された時間は45分…



コレは、非常にマズい…




もう、この時間になると、ちょいちょいと安い仕掛けを買ってささっと帰る客ばかり



2時間前から、店頭の目立つ場所に2万くらいのリールを並べちゃいるが、客は全く釣れない
釣り具屋が釣るのは客であり、魚ではない
魚釣ってる釣り具屋は釣り具屋じゃーねぇーんだよ




ピンポーーーンピンポーーーン



来た!客!!!




今日最後の客となるぞ!!!!
大物来い!!!!!






( ゚д゚)









終わった……………………………
俺の栄転、終わった…………………………










当店のお客様ランキング最下位のクソ客

あまりに平身低頭だから、蔑ろにも出来ないし、スタッフ総勢でバカにするくらいしか楽しみの無い男

嫌だね。名前まで覚えちまった







明時菜前………さん






終わった…俺の栄転終わった……………






こいつは「絶対金を使わない」

絶対に高い竿もリールもルアーも買わない

元々使ってた竿が500円の竿で、それがちょっと珍しい黄色い竿だったもんで、とあるブログで「片瀬の黄色い竿」とかいう通り名が付き、本人も調子に乗ってる、本物のクソだ
湘南は片瀬漁港でいつも釣りをしていたからついた通り名だ、とか言っていたが、聞きたくもないクソな話
しかもその上、その上だよ
その黄色い竿が折れたってんで、新しい竿を選んでやるよって言ったら「いらんです。大切な友人から頂いた竿がある。それでやる。それが折れるまでそれでやる」と言う







絶対に釣れない奴

クソ客はどこまでもクソだ







親父、ゴメン




俺、今年はダメだわ



来年、また結果出せば、栄転出来るかもしれん



本気でちょっと泣いたら、笑えて来た



もう、良いや、って…









「あら!いらっしゃいませ!(笑」

『何で笑うんですか(^^;;』

「いや、明時さん来たから、店閉めます(笑」

『(笑いつも本当すみません(^^;;』




すみません(^^;;じゃねーーーーよ!!!!買えよ!!!!そこのリール!!!買えよ!!!!



「では、閉店しまーーす!店内確認お願いします!」

『フロア、トイレ、お客様いらっしゃいません!閉店OKでーーーーす!!!』

「了解!お客様ではない明時さんがいますが、シャッター下ろしまーーーーす!!!(笑」

『wwwwwwww』




スターーーーーッフ!!!『wwwwwww』じゃねーーーーよ!!!!
明時いぃぃぃーーー!!!へらへらしてんじゃねーーーよ!!!
お前マヂで客じゃねーーからなぁ!!!



本当に終わったな……



閉めたら栄転祝いに行こうと思ってた釣り場、あそこ釣れるからなぁ…
栄転祝いじゃなくなっちまったけど、残念祝えないで行こう…



しかし…


今日の明時、エラい真剣にルアー選んでんな…



もう終わったし、何か、もう、逆に優しい気持ちになって来たわ
あ、でもまだレジ閉めてないか…
まあ良いや
何釣る気なんだろ


「明時さーーん!で?で?次は何を釣りに???イカ行きます?シーバス?メバル?アジ行っちゃいます?(笑」

『店長!抜けがけしないで下さいよ!(笑』




抜けがけじゃねーーーーよ!!!!こいつが釣れる訳ねーーだろおぉぉ!!!
ってか、帰れ!スタッフ帰れ!!早くタイムカード押せ!
年度末までギリギリ残業で付けたら上から言われんの俺なんだよ!!!




「いやーーーー、狙いはシーバスなのですが、まぁ、いつもの通り、釣れりゃ何でも(^^;;」

『(笑そして、明時さんは結局釣れない、と(笑』

「やかましいわ!Σ( ̄□ ̄;)」

『明時さんは本当に釣れない奴(笑』

「だから!やかましいわ!(笑」





いや、やかましいのはお前だ明時。早く帰れ!!





……
…………





(・・?
ずいぶん長い事ルアー選んでんな…




待てよ、待て待て、俺



コレ、チャンス?




良く考えろ、俺…
幸い、まだレジ閉めてない
いつもと違って、真剣にルアー選んでるクソ明時…


( ー`_ー)…


( ー`_ー)…( ー`_ー)…( ー`_ー)…




Σ( ̄□ ̄;)



やべ、明時がこっち見てる!
マズいマズい、悟られるな

どうする?どうしたら良い?どうするどうする?

コレは「最期のチャンス」かもしれないぞ

あのケチがあんだけ真剣にルアー選んでる…何か策はないか?
いや、あるはずだ。策はあるはずだ




そうか…そうだ



今日、俺が行く釣り場…秘密だけど教えるか
んで、ルアーを買わせりゃ…
絶対釣れるしな、あそこ


コレだ…コレだよ…


秘密の釣り場は教えたくないけど、背に腹は変えられない!

明時菜前えぇぇ!!!








お前を!!!釣る!!!!








悟られない様に、なるべく自然に近づく…コレは釣りの基本だ


「………ちょっと相談ですが…」

『ん?はい?(・・?』

「その釣り、いつ行くんですか?明日ですか?」

『そーーーーー……で、す、ね…明日休みなので、まぁ、明日かなぁ、と…』

「明日休み!今夜、今から行きません?」


……



…………





…………





こんのクソ明時いぃぃぃーーー!!!なぁにを黙る!!!


『え、ええ!?いや、今日はさすがに…しかも今からって(笑店長だって今日は忙しかったでしょ(笑(^^;;』

「いえ、全然全然」

『いや、無理ですよ(^^;;無理無理。竿もタックルも無い仕事帰りですし、今からは物理的に無理(笑』

「…」

『せっかく誘って頂いたのに、申し訳ない(・・;)』





こ、こいつ…本当に釣れない奴だな

ココで諦めてたまるかクソが!!




「明時さんだから言いますが『絶対に釣れる場所』があるんですよ」

『絶対に釣れる、ですか?』

「はい。絶対に釣れます」

『シーバス?』

「だけじゃないです。アジも、イカも、メバルも釣れます」

『え?ええ?全部絶対釣れるんですか?』

「いや、さすがに(笑全部絶対ではありませんが、どれかは絶対釣れます」

『ぬぬ…行きたい!ですが!無装備では不可能ですよーーー!
。・゜・(ノД`)・゜・。』




全部何て釣れる訳ねーーだろ!!こいつ……!!!やはりクソだな!
いやいや、ダメだ、諦めさせるな…
今ここで考えるべきは「諦めさせない事」

どーーする?どーーすればこいつを「釣り場へ連れて行ける?」

セールスの常套句

一旦、引く

それだ!!!





「そうですか…んーーーーーー、凄い残念。じゃ、私だけ行きます(*´∀`)」






来い!!!喰え!!!!

頼む!!!俺の流した釣り針にかかれ!!!!







『ちょ、ちょちょ、待て、待って下さい!一旦帰らせて下さい!タックル持って来ます!』





かかった!!!!
来た!来た!!!来たぞーーーーー!!!!!

接客の基本!!!獲物がかかったら、考える隙を与えるな!!!
考えれば考える程、獲物はそれを異物と認識して吐き出す!
吐き出す前に、しっかりと上顎に針をかける!






「申し訳ない(^^;;あと…そうですね…20分以内にココを出たいんですよ。でなきゃ潮が変わるのに間に合わないです、時合い終わる(^^;;」

『えーーーーーー、もーーーーーー!竿は?リールは?指定あります?』

「とかく、潮が良ければ入って来るので……………」






かかってる、かかってるぞ…
後は、このバカ…獲物を、タモにそっと入れるだけだ…

考えろ、考えろ俺

竿もリールもないアホ…しかも、金は使わない…

金は最初が肝心だ…「どんなに硬い財布の口も、一旦開けば雪崩式」
コレは、商売における商法戦略の基本のキ

目の前にあるのは…「明日お父さんと一緒に釣ろう!コレで完璧サビキ入門セット」






「本当に、明時さんだから教えますよ………そこのサビキセットの竿とリールで、あとはルアーがちゃんとしていれば釣れちゃうんですよ…」






『道具が無けりゃ買えば良い!入門サビキセット買うから連れてけ!( ;`ω;´)』





つ、釣れたーーーー!!!!!
( ゚∀゚)  アハハハハノヽノヽノ \ / \

絶対釣れない奴!!!
釣れたーーーー!!!!!
( ゚∀゚)  アハハハハノヽノヽノ \ / \







「よっしゃ!そう来なくちゃ釣り人じゃないですよ!Σd(-`ω´-〃)」

『竿とリールはコレで良いとして、ルアーどーしましょ!?』

「任せて下さいよ!」






こうなれば、もうこっちのモンですよ…

12960円…

親父……

俺、栄転するよ!!!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。





コレとコレとコレ…んーー最悪潮がああなると…コレいるな…あと、イカが入って来りゃエギはコレとコレでまず間違いない…


なぁんて、分かった様な言葉並べて、そこそこのルアー買わせりゃ良いだけ…
やった…やったぞ…
釣れない奴を、最後に釣ってやったぞ!!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。




「明時さんのいつもの買い物的には完全に予算オーバーで大変申し訳ありませんが、コレで絶対です!」




お前の予算何か知るかいな

さあ、さあ…

払え!!!16200円!!!!










『諭吉越え…(´・ω・`)』








明ぉぉおお時いぃぃぃーーー!!!
場所まで教えるんだぞおぉおぉお!!!
払ええぇえぇええーーーーー!!!!!





『………他人の釣果の為に本気で選んでくださり本当にありがとうございます!。・゜・(ノД`)・゜・。』





お買い上げえぇええぇえぇえ!!!!ありがあぁあぁとーーーーーう!!!ございますぅうぅうぅうううーーーーー!!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。
こいつがバカで、本当に良かった!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。





『すぐに出発しましょう!!!(((o(*゚▽゚*)o)))』






親父…親父…やったよ…俺、やったよ…コレで売り上げ達成出来た
。・゜・(ノД`)・゜・。
このバカのおかげで

本当、商売はカモをどう捕まえるかだね
釣り具屋は、魚じゃなくて、人間をどうやって釣るかだね

釣れない奴を、釣ってやったよ!!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。






「(笑そんなに慌てないで下さい(笑精算済ませないと店から出られんですよ(笑」





売り上げ達成を確定する、レジの精算ボタンを押す俺の指は、喜びで震えた


気分はもう「絶対釣れない片瀬漁港で、80センチのシーバス上げた」気分
。・゜・(ノД`)・゜・。


(あくまで、こんな気分って画像です。こんなの絶対釣れません。CGです)



テンションMAXの明時様を乗せて、例の場所へ…
教えたくねーーーけど



「では!向かいましょう!!!」



何やら車内を観察しまくる明時様…



ええ、ええ、そうでしょうね…



だって、色々釣るって言ってんのに、俺のタックル少な過ぎですわ
だって、あそこ、最低限のタックルで釣れるもん
(⌒-⌒; )







『しかし…店長、ずいぶんタックル少ないですね(・・こんだけ私はルアーあるのに…』







そりゃそーなりますわな
。・゜・(ノД`)・゜・。

下手したら訴えられるレベルだよな…

許して下さい、明時様。あなたのおかげで栄転出来るのです…






「なはは、バレちゃいました(^^;;実はですね、売り上げギリギリだったので、明時さんが釣れりゃそれでOKだったんです(^^;;場所は本当に教えますから、怒らないで下さい(´・ω・`)本当にすみません」


『え?って事は?え?何?店長本当は今日は、別な場所に行く予定だったって事ですか!?Σ( ̄□ ̄;)』



(・・?
別な場所の話なんかしてねーよ?んん?
まぁ、まあまぁ、話合わせておくか



「そうです(^^;;だから、そこ用のタックルしかない(笑」

『いやいやいやいやいやいや!!!それは申し訳ない!んじゃ、そっち行きましょうよ!最初に決めてた場所で良いですよ!Σ( ̄□ ̄;)』


「いや、だから、明時さんが釣れりゃそれでOKだったんですって(・_・;」


『ありがとうございますぅーーーー!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。じゃあ、お言葉に甘えて、秘密の場所教えてください!!』






(・・?



……



…………………………





あ、こいつ、本物のバカだ
気付いてないんだ
( ゚д゚)









「………………!なる程!!!本当に釣れない奴ですね、明時さんは!(笑では!行きますよーーー!!!」

『お願いしまーーーーす!!!店長様ーーーーー!!!(*´∀`)b』





バカばんざーーーーーい!!!!
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

もう、場所何てどこでも良いじゃん!
適当な所行きゃ良いな!
笑いが止まらんwwwwwww

明時様、釣るの簡単すぎワロタwwww




車は進むよどこまでも〜
(*´∀`)


しかし、ちょっと考えろ俺…


こいつが今夜ちゃんと釣れれば、これ程のバカだ…




本物のカモに出来るわなぁ…
また、売り上げ達成微妙な時に今日の作戦使えば、こいつ1万くらいなら払うだろ



おいおいおい…本店に栄転して、本店に土産客まで持って行けるじゃんコレ!!!

俺の人生始まったわコレは!!!!
♪───O(≧∇≦)O────♪



明時が釣ーれたっ(^ ^)
明時が釣ーれたっ(^-^)/
明時が釣ーれたっ*\(^o^)/*ヒャホウッ!


あんま有名じゃなくて、適度に釣れる場所連れてきゃ良いわな…




到着くうぅぅうーーーー!!!





『よっしゃああ!!始めましょう!!!』

「釣っちまって下さいよ!Σd(-`ω´-〃)」

『店長様ーーーーー!!!(*´∀`)』



うふふ…明時様ったら、カワイイ(^ ^)
あんなにはしゃいで(笑

あら、もうあんなに遠くに(笑

栄転決まりかぁ…本当嬉しいわぁ…
何かアレだな…本当、今まで頑張って来て良かったわ


お?隣りが釣った…おーーーー、カマスかいな

回って来てんのか?


おっ!おお?おっ!来た!

カマスか

完全にカマス場になってんだな



隣の方はホイホイ釣ってる



まずい、ニヤニヤが止まらん…
カマスなら明時様も上げられるでしょ…

上げりゃあ俺への信頼は絶対になる…








『店長ーーーーっ!!!!』


お?


走って私の所に来る明時様


『つ、つつ、釣れたーーー!!デカカマスですよーーー!!!(((o(*゚▽゚*)o)))』




やったーーーーー!!!!

コレで本店への土産客決定ーーー!!!!
俺の人生始まったーーー!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。

い、いかんいかん!顔のにやけが止まらん!
しっかりしろ!俺!







「あら!凄い!釣れない奴なのに釣りましたね!(笑」

『だから!やかましいわ!(笑本当にここ凄いですね!』





お前自身はめっちゃ簡単に釣れたけどな(笑






「だから言ったじゃないですか、絶対釣れるって(^^」

『もーーー!店長様ー!(*´∀`)』



このバカ、カマスバス持ちしそうな勢いだな(笑




「ほらほら!カマスバス持ちして!写メりますから!」

『ありがとうございます!(*´∀`)』




するのかよっ!!!wwwwww
ダメwwwお腹痛いwwwwww




血だらけの指してカマスバス持ちしてるバカの写真は、とても良く撮れた
うむ、俺はカメラの才能もあるのかもな(。-`ω´-)


『店長もさっき、何か釣ってたじゃないですか?リリースですか?』

「はい、リリースしちゃいました(^^;;」

『あらま、でも、今多いですよね、リリース派』

「ちゃんとリリースしないと魚死んじゃうので、結構難しい話ですけどね」



買わせ過ぎず、買わなさせ過ぎず、時にはこうして場所まで教える。そうしないと、客は離れてしまいますからねぇ(^^
ま、場所は適当な場所何ですけどねえぇえぇえ!wwwwww





『んじゃ!私と店長のツーショット撮りましょーーー!!!(*´∀`)』


俺とツーショット?良いねぇ〜!
釣れた獲物と撮る写真は最高だよな!な?明時!(笑


「はいはい、はい、ピーーース(*´∀`)ノ」



その後、しばらく粘るも双方釣れず



「もう、完全に潮変わってますし、魚は沖です(^^;;もう帰りましょうか」




ってか、もう帰りてーーーし。帰って祝杯だよ今日は!
。・゜・(ノД`)・゜・。
お前の相手はこんくらいで十分だろ!




『あら、残念。店長様、明日仕事ですもんね(^^;;でも、ここまでして頂いて、本当にありがとうございました、本当にm(_ _)m』

「いや!いやいや!私の方こそありがとうございました!私はね、明時さんが釣れただけで、本当に十分だったんですよ(^^」

『。・゜・(ノД`)・゜・。何て良い人何ですか!あなたは!』



ここまで言ってんのに、まだ気付かねーーーの!(笑
俺、良い人?wwww
ダメだ腹痛いwwwwww
もうちょっと遊ぼwwwww



「明時さんが釣れて、私は十分。しかも私は魚も1匹上げたので、日本語的には十二分な結果ですよ(^^」

『日本語的には?ん?(・・?』





ダメwwwダメダメwwwお腹痛いってwwww





「もーーーー、本当に明時さん!そこが釣れない奴な訳ですよ!(笑」

『分からんですーーー(笑でもでも!私もちゃんと、釣りました!!Σd(-`ω´-〃)』





いや、俺に釣られてるけどねwwww





「ですね!Σd(-`ω´-〃)」










長い長い、俺の1日は終わった…












翌日の本社会議で俺はモチロン、本店への栄転が決定

本社会議が終わった後、昨日まで店長だった店で引き継ぎ
長い事店長をしていたこの店とも、サヨナラだ…




サヨナラ…




ん?待てよ?
待て待て、待てよ…

そうだよ…な…

この栄転に、多大なる御貢献を下さった明時様は、俺に会いに「この店に来る」んだよな?そうだよな?
…うん、そうだ…


え?
ヤバいじゃん!!!Σ( ̄□ ̄;)


あいつ、本店への土産客なんだから、ここじゃなくて本店に来てくれなきゃ意味ないし!
Σ( ̄□ ̄;)

危ねーーーー、気付いて良かった(・・;)



「おーーーい!店長!!後任の店長!!」

『はいぃぃーーー!!!』

「クソ客の明時さんいるじゃん?」

『はい』

「クソはクソだったんだけどさ、お前も知ってる通り、最後の最後、助けてもらったのよ」

『はいはい、分かります』

「でね、やっぱりほら、俺もさぁ、感謝してるのよ」

『はい』

「でね、俺が本店に行っちゃったら、彼も困ると思うのよ」

『?何でですか?』

「いや、ほら、だってほら、俺、ポイント教えてあげたりしてたし」

『?店長のポイントは俺達も知ってますし、明時さん来たら俺達が教えるんで、別に問題ないと思いますが?』

「いや、だーかーらーさーーー」

『本店の月末、売り上げ行かない時にカモりたいって事ですよね(^^;;』

「いや、そーは言わないよ、そんなん俺がスゲー嫌な奴みたいじゃん…なにその言い方」

『いやいやいや!Σ( ̄□ ̄;)違います!そんな意味で言ったのではありません!(こいつ本物のカスだな)』

「それなら良いんだけど…でね、まぁ、カモりたいとかは無いけど、本店でもまた、明時さんの力になってあげたいからさ(^^だから、俺が本店に移動したって教えてあげてね」

『(クソとか言ってたクセに、いきなり、さん付けだもんな、怖いよな、社会って)はい!了解です!∠( ̄□ ̄)』

「それと、明時さん来たら、コレ渡してあげて」

『?封筒?何ですかコレ?』

「釣れない奴が釣った写真(笑」

『見て良いですか?』

「うん(^^」

『Σ( ̄□ ̄;)カマス!デカいですね!って…バス持ちヤバくないっすか!?(・・;)』

「本当バカだよねーーーwwww指血だらけwwwバス持ちしたら?って言ったらマヂでやりやがったwww」

『(こいつガチでカスだな…明時さんも大概だけど、引くわ)あはは…(^^;;はい、渡しておきます』

「よろしくね!Σd(-`ω´-〃)」

『はい!了解です!』

「あと、最後に一つだけ。余計な事言うなよ」

『(さっさと消えろカス)分かってますよ!でも、怪しまれては双方に良い事ないので「私が知っていて当然であろう事」くらいまでは話さないとヤバいと思うので、キチンと情報を整理して、明時さんに話しておきますよ!任せて下さい(^^』

「うん、お前は分かる奴だ。よろしくな!」

『ふふふ、本店でも頑張って釣って下さい!(^^』








ふふふふふふふ…布石は完璧だ

ダメだ、ニヤニヤが止まらん…








念願の栄転を果たし、本店での業務に追われる日々
しばし、俺は明時の事など忘れて仕事に没頭していた
そんなある日の事


月末に向けて少しづつ本店店長が売り上げを気にする話を朝礼でし始めた


売り上げなーーーーー、店長になると分かるけど、本当月末は焦るんだよなぁ…
そんな時には、やっぱり明時みたいなバカが…







Σ( ̄□ ̄;)


そうだ!!!完全に忘れてた!!!
明時の奴、全然来ないじゃん!!!!Σ( ̄□ ̄;)

前の店の後任店長、本当にちゃんと明時に話てくれたのかな
写真まで渡すように言ったんだぞ、ふざけんなよ…



栄転して初めての月末近くだ…奴が来て、売り上げ上がれば間違いなく、俺の評価は上がる
本店店長の夢も夢ではなくなるぞ…







『「いらっしゃいませーー!!」』






うるせぇなぁ…本店の従業員、声デケェよ…







Σ( ̄□ ̄;)

Σ( ̄□ ̄;)Σ( ̄□ ̄;)Σ( ̄□ ̄;)






みょ、明時いぃいいぃいぃいーーーー!!???

( ゚д゚)



何だこのタイミング!?
月末近く…このタイミングで!?
バレたか?



………

いや、待て待て、俺、待て


もし明時が全てを知って、俺を訪ねて来るなら…

「月末近く」ではなく「月末」だろう

間違いない。たまたまだ!奇跡のタイミング!

あのバカが気付く訳がない







ま、じ、で、俺の評価上がるの決まりだ!!!








「店長おぉおぉお!!!」

『ん!?なに!?どうしました!?』

「今!ほら!入って来たあの客!」

『うん』

「あいっ…あの方、前の店の、私の常連様何ですよ!」

『……へえ…凄いですね(^^』

「いや!そーじゃなくて!今月の売り上げ!一撃で達成に限りなく近付けますよ!」

『(・・?』

「あいつですね、めっちゃバカなので、私の魔法で一撃です!」

『Σ( ̄□ ̄;)マヂで!?それめっちゃ助かりますよ!』

「多分、私を探してますので、ちょっと泳がしておいて下さい!」

『本当に?だったら本当凄いですよ(・・;)』

「よーく私とあいつを見ていて下さい!」

『期待してるよーー!!(*´∀`)』

「任せて下さい!Σd(-`ω´-〃)」

『あ、一つだけ。お客様を呼ぶのに、あいつ、は絶対ダメだよ(´・ω・`)』

「Σ( ̄□ ̄;)す、すみません!」

『最初あいつって呼びそうになって直したよね?で、直せてねーから。絶対やめてね(´・ω・`)』

「Σ( ̄□ ̄;)申し訳ありません!(うるせーな)」







店内を回遊する明時…
間違いない、絶対に俺を探している
獲物を探す釣り人の眼だ


ま、獲物はお前なんだけどな(笑






うわ、こっち来た来た!!!






店長は…良し、こっち見てる…
ここで大物上げたるで…







「あのーーー、すみませーーん(^^」






来、た、ぞ







『はい!はいはい!少々お待ち下さい!今、陳列していますので!』



待ってました!とばかりに反応してはイケない

どう反応するのが正しい?考えろ、考えろ俺…




「もう一度、絶対釣れる釣り場を、教えてほしいんですよ(^^」







( ゚д゚)


明時いぃいぃいいーー!!!これ以上ない最高のパスだよ!( ;`ω;´)
ありがとーーーーう!!!!
。・゜・(ノД`)・゜・。





『少々お待ち下さ………はい?』



自然だ!極めて、自然な反応だろコレ!




『Σ( ̄□ ̄;)みょ、明時さん!!!?』

「お久し振りです(*´∀`)ノ」

『どど、どうしたんですか!?え?何で!?』







俺、パーーーーーフェクトゥ!!!!!
Σd(-`ω´-〃)







「前の店の今の店長に、ここにいると聞きまして!(笑」

『き、聞いた…(^^;;ですか?聞きましたか(^^;;』




正念場、正念場だ…何を聞いた?どう聞いた?





「はい!聞きましたよ!」





何をどう聞いたかは分からない…どう答えるのが正しい?
こいつが聞いた話は
《ただ、私がここに移動になっただけの話》
《全ての理由を含めた話》
間違い無くこのどちらか、だ

どう返す?
双方の可能性を考えて、最も的確な返し…


すみませんでした…で始めるのが最適だろう…


すみませんでした、で話を始めれば、ただ移動になった事だけを知っていた場合、移動先を教えていなかった事に対する謝罪と受け取られる
全ての理由を知られていた場合も、あの時はああするしかなかったのだ、という意味で、すみませんは成立する

それだ…







『いや、本当に、すみませんでした…』



さあ、明時…どう返して来る?








「いやいやー!本当、ここに転勤になる事聞いてビックリですよ!教えておいて下さいよ!(笑」


お?おお?こ、れ、は…






『?何を聞いたのですか?』


さあ!さあ!どう返して来る!?







「いや、またここに来れば、絶対釣れる釣り場を教えてくれるだろう、って!(*´∀`)」








決まりだ…

この一言を、どれ程待った事か…




こいつ…なあぁあぁぁあぁんも気付いてない!!
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

そして後任店長グッジョーーーーーブ!!!!
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)’・*:.。. .。.:*・゜゚・*













『………なる程!はい、はいはい!教えますよ!
Σd(-`ω´-〃)今は磯が熱いですよーー!!そこの、磯釣り入門セットの竿とリールがあれば、絶対釣れる釣り場があるんですよーーーー(^^)』





ヒューーーヒューーーーー!!!!
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

さあ!明時!俺に釣られる釣り人生の始まりだ!!!
( ゚∀゚)  アハハハハノヽノヽノ \ / \

お前は結局誰かに釣られて終わる人間なんだよ!!!






本当に、釣れない奴だな!!!wwwww














「竿とリールと、今度はルアーじゃなくて『あなたが選んだ仕掛けがあれば』ですね(^^」















( ゚∀゚)  アハハハハノヽノヽノ \ / \

は?

(・・?


え?


待て、待て待て、考えろ、俺

今こいつ何言った?

竿とリールと、今度はルアーじゃなくて『あなたが選んだ仕掛けがあれば』ですね

と言ったよな




こいつ…いつから気付いていた?

待て、待て待て、結論出すのはまだ早い

後任のクソ店長野郎、全部吐きやがったのか?

いや、違う、考えるべきはそこじゃない

本当に気付いているのか?









『?…………ああ、なる程(^^;;』




「釣れない奴が釣れたんです、やはり、あなたの腕は素晴らしい!(笑」








確信

どこで気付いたのかは分からないが、ダメだこいつ
気付きやがった



店長見てるし、多分会話も聞こえてんだろーな


終わった









なぁんか、こんな気分、前にもあったな…

ああ、そうだ…そうだよ。ここへの栄転が絶望的な状況だったあの年度末

このクソ明時が入店した来た時だ

終わった…と思ったよな

本気でちょっと泣いたら、笑えて来たんだよな…



もう、良いや、って…








『(笑』

「(笑」









この野郎…こんな顔して笑う奴だったのか…











『この、「釣った奴の写真」は私じゃなくて、あなたが持っているべきです(^^』



(・・?

この封筒は…俺が後任の店長に、明時に渡せと言って置いて来た封筒だ…


明時はその封筒を私に渡すと、ニヤリと笑って店を出て行った


封筒を手に、呆然と立ち尽くす俺







一部始終を見ていた店長が来る




「彼、何も買わずに帰っちゃったよ(´・ω・`)」

『ちち、違うんです!ちょっと今回は、アレで、違って!あいつが!…あ、いや、あのお客様が!』

「?……いや、話聞いてたけど、良く分かんなかったけど、取り敢えずさ、あいつって、お前本当それやめろよ。どんだけ親しいか知らないけど、客に向かって、あいつが、って呼称が出るだけで終わってるからな」

『すみません』

「結構な問題だから、それ」

『すみません』

「期待してたのに、そんな奴ここにいらないんだけど」

『…!?…すみません!!!』















あの野郎、何で写真返して来たんだ…


俺が渡した封筒


何で俺が開けるんだよクソが





中には、あの夜撮った写真が入っていた




明時がカマスをバス持ちする、あのバカ写真





ではなく




俺と明時のツーショット



『この、「釣った奴の写真」は私じゃなくて、あなたが持っているべきです(^^』



「釣った奴の写真」ねぇ…




うん、良い笑顔だ、明時菜前






お前は本当に、釣れない奴だよ