「影響」だ

「影響」だ

僕の書いた「命波」は、その「数式」は、風によって「上書き」されたんだ…

「大いなる母の抱擁」
ベン.データ独自の「重力の数式」

そこから導き出された「命波」の「影響」













「先生………やはり「命波」は……」

『皆まで言うな………可能性としては有り得る事だった。十分に、有り得る事だったよぉ……』
































彼等二人は、とてつもない発見をする











それは…「命波」に存在する「放射線」に似た性質



「放射線」つまり「放射能」がどれだけ恐ろしい力を持つのか?
日本人ならば誰もが知る「あの日」
「福島第一原子力発電所事故」
放射線は、本当に恐ろしい力を持つ

では、放射線がなぜ恐ろしいのか?それは、そのあまりにも強い「生物への影響」があるから
放射線は爆弾のように一撃で全てを物理破壊する力は無いが、目に見えない「遺伝子」を一撃で破壊してしまう

放射性物質からは、とても小さな銃弾が、数え切れない量打ち出され続けているのだ
小さな銃弾は、爆弾のように直接人体を破壊する事は出来ないし、それどころか、人体に目に見える破壊を起こさずにすり抜けてしまう
しかし、目に見えない銃弾は目に見えない存在を破壊する
それが「生物の遺伝子」
放射線を受けた生物は「遺伝子」をグチャグチャに破壊される
だから放射性物質、そこから放出される放射線は恐ろしい



そして「命波」もまた、同じような性質を持っていた

が、もちろん、放射性物質と「同じ」では無い




命波は、風により容易く流される、そして物理衝撃にはかなり強い
これは「音」を物理的に破壊する事が出来ないのと同じなので理解出来たが、事、命波は、自身が持つ「音波と電波の二重性」による「光速に到達する音」により「物質に影響を与える事が出来る」という驚くべき性質を持っていた

そもそも「音」には「固有振動数」があり、その振動数を利用した「音響共鳴」により、物質を物理的に破壊するくらいの「影響」を与える事は出来る

しかし、命波の持つ「影響」は、破壊とか、そんなレベルの「影響」ではない

それこそ「ライオン」の科学技術力でしか発見出来ない「とても小さな影響」ではあるが…





命波は「共振紋」を物質に与えるのだ






それはさながら「放射線」の様な力であり、しかし、その実「影響」の意味は全く違う
どちらかと言うと「風紋」に、とても近い影響を物質に与える


「放射線」は「破壊」

「命波」は「記録」











『ベン.データ…コレは…本当に…』

「アカシックレコード…僕はあの日、先生が言ったアカシックレコードの話を聞いた時、とても不思議に思いました」

『…』


「なぜ、神は「レコード」を選んだのか?この世界を記録する「アカシックレコード」…記録媒体ならば、アカシックCDでもアカシックDVDでもアカシックブルーレイでも良いのに、なぜ「レコード」などという、原始的記録媒体なのか…」












Pは研究室の中にある一室にベン.データを連れて行く



「おお?コレはコレは…懐かしいいぃぃ〜〜!ブラウン管テレビ!タイプライター!白熱電球!」



『ふふん…良いよねぇ…「古い」モノは…んで、コレ…』



「素晴らしいですね」



静かに回るレコードプレイヤーに、Pは針を落とす



夕暮れの研究室に満ちる音



Pの鼻は、あの日の様に…夕暮れに染まる海の様に紅く染まる

















「影響」だ

「影響」だ

僕の書いた「命波」は、その「数式」は、風によって「上書き」されたんだ…

「大いなる母の抱擁」
ベン.データ独自の「重力の数式」


そこから導き出された「命波」の「影響」




「命波」の「影響」





何かに何かが「影響」を与える限り、それは、その「何か」が、既に「何か」によって「力」を与えられていなければならない


例えば、目に見える風で在る「風紋」は、風、つまり空気を構成する分子が気圧によって「力」を与えられ「風」という現象に変化していなければならない


それは「命波」とて例外ではない
「命波」が物質に「共振紋」を与える事が出来るのならば、命波は既に「何か」によって力を与えられた「何か」以外の何物でもない












「先生………やはり「命波」は……」

『皆まで言うな………可能性としては有り得る事だった。十分に、有り得る事だったよぉ……』

「やはり…やはりまたしても、分かっていたのですね…」

『そう…「命波」は、既に「何か」によって影響を受けた「何か」だねぇ…いや、良いんだ、良いんだよぉ…それが「確実な事」だと分かったのだから、それで良い…実に素晴らしい…本当に素晴らしい…』


Pは、旋律を奏でるレコードから針を持ち上げた









『さあ…始めようかねぇ…「命波」の分解を…「命波」の研究を…』













Pは久し振りに

大きく

大きく

鳴いた

その鼻を、紅に輝かせて
























後に、彼等の研究により「命波」は「何か」によって「影響」を与えられた遺伝子や、分子間力の揺らぎが起こす「紋の一種」であると定義付けられる

それは「命紋」と呼ばれる事になり「命の波」を観測したという大きな功績として後世に遺る

が、二人の天才はその功績を喜びはしなかった







「我々はこれから「ヒッグス粒子」に次ぐ歴史的存在を発見しなければならない…」

『んーーーーー?』

「この実験が始まる前、最初に先生が僕に言った言葉です」

『もちろん覚えているよぉ〜』

「重力子…落ちる音…あの辺りまではかなり良い感じだったのですがねぇ…確かに、今回の「命紋」は、とてつもない発見ではあります…が…根底から、意味がまるで違う」

『いや…うん、うんうん…コレで良い…コレで良かったんだよぉ…』

「………正直…悔しいです…」

『今はそれで良い…それが、良い』

「?」

『そう遠くない未来、分かる』


















さらに先の研究で二人は、命紋の性質を利用した「個の判定」を証明
指紋認証、声紋認証、虹彩認証に次ぐ新世代の認証方法




「命紋認証」を確立





誰にも、どんな方法でも、何を使用しても、決して同じ「紋」を創り出す事の出来ない、絶対的証明認証システム「命紋認証」


それぞれの命紋を特殊な記録媒体にコピーしカード型にする事により、簡単に持ち運び出来、しかも本人以外には絶対に使用不可能な「完全なる個人証明証」























しかし、そんな完璧な認証システムも、まだ世の中に公表されてはいない

「ライオン」という、この研究機関内でのみ使用される認証システムに過ぎない

































ベン.データは、あの日「命紋認証」を世界に公表し、ライオンの資金源にしようとPに提案したが、Pはそれを拒否


ベン.データはPに問う


「なぜですか先生!この認証システムは「絶対」です!この研究結果が世界に広まれば大きな収益になり、我々のこれからの研究を大きく飛躍させる事になります!既存の命紋の中にも、通常とは違う命紋が存在する事も分かりました、それを調べるには資金が必要だ!それも、多額の資金が!」

『ベン.データ…あまりガッカリさせないでねぇ〜』

「?」

『全てに存在する「命紋」の中にも不思議な紋を持ち、通常の命紋認証システムに記録出来ない存在がある…』

「そ、そうです」

『出来たよぉ…それ』

「え?」

Pは懐から一枚のカードを取り出す

『通常の命紋認証システムでは記録出来ない「特殊命紋」その代表的な「紋」は、ワタシの「鳴き声」だ…その命紋は、このカードに記録してある』

「は?」

『さらに言えば、そのワタシの鳴き声にキミの命紋を刻む事にも成功している』






ベン.データには、もう、理解が出来なかった
Pが何を言っているのか、何に成功したのか…どこまで到達しているのか







『このカードは、世界に唯一の「二人の人間が証明される命紋認証カード」だ…ベン.データ、君は本当に優れた人間だ。君が存在しなければ、ここに到達出来たか分からない。このカードはその感謝の証として作った』


Pはそのカードを、ベン.データに手渡す


「…?」











『受け取れ、ベン.データ』













ベン.データがカードを受け取った瞬間












世界が


光る


ああ…


コレは…


「あの嵐の海岸」


あの「輝く世界」…

















消えゆく意識の中で、優しいPの声が聞こえる





















『次にキミがこのカードを手にする時、時代は大きく変わるだろうねぇ…その日を心から楽しみにしているよぉ…良いかい?ベン.データ、全てには「愛」が必要だよぉ………』






「愛」?







『……さぁて…新時代の幕開けだ…』









先生…先生……愛とは?愛とは?















『約束通り、プレゼントを渡さないとねぇ……………………あーーー、Pだ、ベン.データが倒れた。意識は…多分無い。大丈夫、心配は無いが担架を頼むよぉ、あと、ペーター君も一緒に来るよう言ってくれ。うん、うんうん、そうだ、よろしくねぇ〜』








意識が在るのか無いのか



寝ては夢、起きては現、幻の…照っても降っても…命紋ばかりを考え、研究して来た日々



















多分、今、自分は運び出されようとしているのだろう


















遠く、Pの声が聞こえる




















声紋認証が「Voice print authentication」だから、命紋認証は「life print authentication」かねぇ…うん、うんうん、良いね…ベン君が喜びそうだ…
しかし「コレ」は…「spirit print authentication」が良いなぁ〜〜〜…






























先生…それでは…


それでは…




























……………